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発熱外来ブログ

2023年5月・6月の菊地医院での検査数・感染者数・陽性率     第9波は始まっています。                 

2023.07.04

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行して、もうすぐ2カ月になります。
全国の新型コロナ感染者は7週連続で増加しており、「第9波が始まっている可能性がある」と指摘する声もあります。
日本政府が新型コロナの感染症法上の類型を変えても、新型コロナウイルス自体が変化したり弱毒化したわけではないので、夏に向けて感染がさらに拡大していく懸念に対し注意を十分に払わなければなりません。
「5類」に移行 する前は厚生労働省は、全国の感染者数を毎日集計して公表しておりましたが、移行後は限られた定点医療機関から寄せられる情報を週1回公表する方法に変更しています。
全国約5千の定点医療機関から6月19日~25日に報告された一医療機関当たりの感染者数は平均6.13人であり、前週比1.09倍と微増が続いています。

菊地医院にも医師会から感染症発生状況(定点把握対象疾患)について上記のFAXが届きますが、 6月19日~25日 は全県で報告数が新型コロナウイルス感染症:1873、次いで感染性胃腸炎:1327、ヘルパンギーナ:1150となっております。本日午前中にヘルパンギーナのお子さまを5人くらい診察しましたが、新型コロナの方がずっと流行っている様子です。
全国の感染者数を連日集計して、新型コロナウイルス感染症の流行状況を見極めるという5類移行前の状況と比べれば、現状の精度の低下は否定できません。

札幌市は新型コロナウイルスに対し、5類移行後も下水サーベイランスというものを継続し、定点把握による陽性者の増減傾向を補完しています。
新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスの感染者は症状の有無にかかわらず、糞便や唾液中にウイルスRNAを排出することが知られております。
下水中のウイルスを検査・監視する下水サーベイランス下水疫学調査)は、受診行動や検査数等の影響を受けることなく、無症状感染者を含めた感染状況を反映する客観的指標としての活用が期待されています。
札幌市の新型コロナウイルスの下水サーベイランスの結果を以下に示します。

調査結果のグラフ
新型コロナウイルス6月26日~7月2日前週比
下水中のウイルスRNA濃度※157,200コピー/リットル×2.0倍
下水からの検出率※2100%(15検体/15検体)±0ポイント
  • ウイルス濃度は再び高い値まで上昇しており、引き続き警戒が必要です。
新型コロナウイルス7月10日~7月16日前週比
下水中のウイルスRNA濃度※129,100コピー/リットル×1.1倍
下水からの検出率※2100%(15検体/15検体)±0ポイント
  • ウイルス濃度は前週からほぼ横ばいで高い水準にあり、引き続き注意が必要です。

第8波は今年の1月6日に、第7波は昨年の8月19日ピークを迎えましたが、札幌市の下水サーベイランスのデータによれば現在の状況は、第7波を越えて第8波に迫る急峻なグラフの傾きを見せており、定点医療機関からの感染者数報告の集計による『微増』とは乖離があります。

現在沖縄県では新型コロナの感染が急速に拡大し、入院患者や重症者が増加傾向にあり、医療態勢が逼迫する懸念が指摘されています。
北海道の札幌市のデータが上記の様ですから、もし沖縄県で下水サーベイランスを行っていたらどのような結果になっていたか、想像するのも恐ろしいです。

ちなみに札幌市の下水サーベイランスのインフルエンザのデータについても、以下に示します。

調査結果のグラフ(インフルエンザウイルス)
インフルエンザウイルス6月26日~7月2日前週比
下水中のウイルスRNA濃度※1138コピー/リットル×1.4倍
下水からの検出率※227%(4検体/15検体)+20ポイント
  • ウイルス濃度は検出限界付近の低い値で推移しています。
インフルエンザウイルス7月10日~7月16日前週比
下水中のウイルスRNA濃度※1141コピー/リットル×1.2倍
下水からの検出率※227%(4検体/15検体)+7ポイント
  • ウイルス濃度は検出限界付近の低い値で推移しています。

インフルエンザについては1月にピークを迎えたあと減少し、検出限界付近の低い値 のウイルス濃度ということですから、ほぼ発症がみられていないということだと思います。
ただインフルエンザは時々散発的に中学校、高校で集団発生しておりますので、注意は必要です。

5月・6月の菊地医院での検査数抗原検査PCR検査)、感染者数陽性率を表とグラフにして示します。
PCR・抗原検査での新型コロナウイルス感染症の合計陽性率は、12月:58%、1月:35%、2月:8%、3月:7%、と減少傾向の後、4月:17%と 再び上昇に転じ、5月:24%、6月:31%と増え続けて1月の陽性率に近くなってきています。

順天堂大大学院の堀賢教授(感染制御科学)は、「5類移行後の開放的な機運に乗って、国民全体がコロナに対し『ノーガード』のような状態になった」と指摘されています。
コロナに絶対に移らないようにしようという意識が、低くなってきてしまっているのではないかということです。
また5月8日に新型コロナウイルス感染症が5類に移行した後には、「感染者や濃厚接触者の外出自粛義務」がなくなりました。
外出自粛期間は2020年1月は14日間でした。
その後2022年1月に10日間に短縮、2022年9月には7日間に短縮され、2023年5月8日以降は5日間になりました。
また感染者の同居家族などは、 5類移行後は「濃厚接触者」として特定されることはなく、外出自粛も求められません。
医療従事者などもそうだと思いますが、世の中には仕事を休むわけにはいかず、絶対にコロナに罹ってはいけないとして、しっかりと感染対策をしてきた人が多数いたと思います。
家族が感染し 濃厚接触者 となり、自宅待機することも困難であり、家族も感染しないように十分に注意をしてきた人も大勢います。
「感染者や濃厚接触者の外出自粛義務」がなくなり 、努力義務になったことで、 コロナに絶対に移らないようにしよう 、絶対に移さないようにしようという意識の箍(たが)がまた一つ緩んでしまったような気がします。

コロナの感染を拡大させないために、「発症日をゼロ日目として 5日間は外出を控える」「発症から10日間が経過するまでは不織布マスクを着用する。高齢者などのハイリスク者との接触は控える」など、周囲へうつさないような配慮は5月8日以降も求められています。
また「濃厚接触者」も外出自粛も求められないが、感染している可能性がある点を踏まえて「自身の体調に気を付ける」「不織布マスクを着用する。高齢者などのハイリスク者との接触は控える」などに配慮することも大切なことです。
PCR検査では感染後数週間にわたりウイルスの排出を確認できます。
感染者は、外出を控えることが推奨される5日間を過ぎても他人に移す可能性があること、
濃厚接触者は、症状がなくてもその後発症しまた他人に移す可能性があることを、
自覚して、これからも引き続き感染対策を講じていくことが必要であると思われます。

昨年の第7波など、夏季に感染が拡大した例はあります。
このときは感染力の強い変異株などが出現したことが大きかったと思われますが、沖縄でみられている状況がこの後全国に拡大していかないように、国民の意識としては5月8日以前の新型コロナウイルス感染症に対する怖いという意識をもって、感染対策も以前のように行っていくことが大切だと思います。

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