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発熱外来ブログ

インフルエンザとマイコプラズマの同時感染症例 ・ インフルエンザのPCR検査 保険適用開始          

2024.12.21

12月15日までの1週間で、全国の1つの医療機関当たりのCOVID-19の平均の患者数は3.89人となり、11月下旬から少しずつ全国の1つの医療機関当たりのCOVID-19の平均患者数が増えています。

一方でインフルエンザも11月に入り増え始めて、12月8日までの1週間では1医療機関あたりの感染者数が9.03人になっていました。15日までの1週間では19.06人と倍増し、基準となる10人を超え注意報レベルとなりました。
毎年1月から2月にコロナの波が襲来している例年の傾向を考えますと、これから厳冬期を迎える日本において、ふたたびコロナとインフルエンザの同時流行(ツインデミック)という状況になると思われます。

また、秋口からマイコプラズマ感染症の感染者数が各県で過去最高となっており、現在でも外来で毎日のように遭遇します。
高熱という症状だけでは、検査をしてみないとこの3つの感染症のどれなのか分からないと思います。

昨日、2日前から咳症状がみられ、昼から38℃以上の発熱があった7歳の女の子が夕方来院されました。
発熱してからまだ数時間しか経過していなかったので、抗原検査の中でも感度の良いドライケム抗原検査でコロナとインフルエンザ、PCR検査でマイコプラズマの迅速検査を行いました。
小学校でリンゴ病(伝染性紅斑)が流行しているとのことで、診察時、それを疑う両側の頬のあかみがありました。
検査の結果を以下に示します。
マイコプラズマPCR検査とドライケムインフルエンザ抗原検査の結果はともに陽性であり、マイコプラズマとインフルエンザの重感染が疑われました。
ドライケムコロナ抗原検査の結果は陰性でした。

マイコプラズマPCR検査の結果は、+ヨウセイ であり、mutation :-ヘンイ ナシという意味は、マクロライド系抗生物質のクラリスへの耐性がなくこの薬が効果があるという意味です。
ただ46サイクルかける途中でやっと40サイクル目で陽性になったということで、とてもウイルス量の少ない検体であったということになります。
ドライケムインフルエンザ抗原検査はウイルス量の多い検体では、1段階目で陽性になりカッコは付かないという表示になります。
カッコ付きのA:() という意味は、イムノクロマト法の検出感度を高めた2段階目でやっと陽性になったということを表わしますので、ウイルス量の少ないA型インフルエンザを診断することができたということになります。
マイコプラズマ、インフルエンザともにウイルス量が少ないところやっと検出できたということで、偽陽性の可能性は否定できませんが、熱発してから数時間のウイルス量が少ないと思われる時期は、できるだけ感度の良い検査を選ぶことにしております。

菊地医院に3台あるPCR検査器:全自動遺伝子解析装置「Smart Gene スマートジーン」は、感度、特異性に優れ新型コロナウイルス感染症マイコプラズマ感染症の早期診断を行う際、とても力強い武器になります。
何サイクル目で陽性になったかを知ってその検体のウイルス量を類推することができ、マイコプラズマについてはミューテーションの有無でクラリス耐性を知ることができます。

そして2024年6月の改定で、インフルエンザのPCR検査の保険適用範囲が拡大されました。
インフルエンザのPCR検査は従来は重症の患者のみが対象でしたが、今回の改定で5歳未満の乳児65歳以上の高齢者妊婦その他の重症化リスクのある患者さまについては、発症から12時間以内では、PCR検査が保険適用になりました。
インフルエンザウィルスの増殖速度は非常に速く、1個のウィルスが24時間後には100万個になるといわれています。そのため、抗インフルエンザウィルス薬はできるだけ早期(発症後48時間以内)に服用を開始することが重要です。一方で、インフルエンザの確定診断を迅速診断キットで行う場合、発症6時間以内は感度が10%前後と低く、高熱がみられてから1日以上経過していないと陽性にならないこともよく経験します。
できるだけ早期に的確に診断し、服用を開始するため発熱後数時間の患者さまに対しては、今までは感度の良いドライケム抗原検査を用いてきました。
5歳未満の乳児、65歳以上の高齢者 など、上記の条件に当てはまるケースでは、これからはできるだけPCR検査もインフルエンザの早期診断に活用していきたいと考えます。

これから厳冬期を迎え、インフルエンザ新型コロナマイコプラズマの感染が同時拡大トリプルデミック)する可能性があります。
流通が悪く不足していたマイコプラズマのPCR検査キットは、相当量入荷することができました。
しかしこれから他の検査キット、そして咳止めや抗生剤などの薬が不足、欠品してくる可能性も考えられます。
発熱などの症状があるのに検査ができず原因が分からない、分かっても症状を抑える薬が出せないという状況です。

今からでもそのような状況に備えて、新型コロナ・インフルエンザに対するワクチンを接種しておくことはとても大切なことです。

前回のブログでもお伝えしましたが、今年度から、コロナワクチンの公費負担による無料接種の制度は廃止され、自己負担が生じる定期接種と任意接種に切り替わります。
10月から65歳以上の方、60~64歳で一定の基礎疾患がある方を対象とした定期接種が始まりました。
当院がある蕨市で3,000円の自己負担で接種が可能な期間は、令和7年1月31日までになります。

新型コロナウイルス感染症の死亡リスクは、肥満・糖尿病・慢性腎臓病といった併存疾患をいくつ持っているかということよりも年齢の増加に従って上昇し、そして高齢者ほど抗体保有率が低くなっており、 年齢が増加するほど重症化・死亡リスクは高くなります
何よりも一番のリスクは、わずか数年前に比べてこの感染症に対する私たち国民の危機意識が著しく低くなっていることだと思います。
この国のお年寄りを守らなければなりません。
感染対策の基本を意識した行動とともに、ワクチン接種の重要性をあらためてお伝えしたいと思います。


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