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発熱外来ブログ

2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査について②

2021.11.13

日本においては新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が9月中旬から激減しています。

埼玉県内においても11月に入ってからは、陽性者の数がヒトケタの日が多くなっています。

第5波のピーク(8月20日 新規感染者数最多 2万5868人)からなぜここまで急速に減ったのか、明確な要因は専門家にも分かっていない様子です。

エラー・カタストロフの限界」という理論があります。

1971年に米国の進化生物学者が提唱した理論ですが、「ウイルスは変異し過ぎるとそのせいで自滅する」というものです。

ウイルスが増殖する際に複製のミスが起きると、変異株が生まれます。このとき、高い複製能力を持つ変異株が生まれてしまうと急速に感染が拡大します。日本のコロナウイルスが変異しデルタ株に置き換わった当初は、このような状況にあったと思われます。ウイルスの増殖が速ければそれだけさまざまな複製ミスが起こり、ある一定の閾値を超えると、今度はそのウイルスの生存に必要な遺伝子までも壊してしまい、ウイルスが自壊する、この考え方を 「エラー・カタストロフの限界」 と呼びます。

新型コロナはウイルス自身が増殖に増殖を重ねて、ウイルスとしての生存の限界を超えてしまい、自然消滅した可能性がある、それが日本で起きたのではないか?、ウイルスの自壊が感染減少ピークアウト)の要因と考える研究者もおります。

しかし、世界に目を向けると、ドイツでは11月5日に新規感染者数が最多になり、ロシアでは11月4日に一日の死者数が最多になっています。お隣の韓国でも新規コロナ感染者が急増していて重傷者が過去最多であるとのことです。

「エラー・カタストロフの限界」の理論が日本のピークアウトの要因であると想定すると、日本では世界の状況と異なり奇跡的にコロナウイルスが自壊し、第5波が下げ止まることなく収束していったのだと思われます。

その日本で今何をすべきなのか?

当然、海外で流行しているウイルスが日本に持ち込まれないように水際対策をしっかりと取るべきであると考えます。しかし、11月5日の発表では、国際的な往来再開に向けた段階的措置として水際対策が緩和され、外国人の新規入国制限が見直され、入国後の行動制限も11月8日から緩和されております。帰国者の入国隔離期間も10日から3日に短縮されております。相変わらず日本政府の方針はまったく理解できません。

日本において3~4ヶ月ごとに感染の波を繰り返す新型コロナウイルス感染症の特性も解明されておらず、海外における感染の再拡大は明日の日本の現象であると考えて、3回目のコロナワクチン接種も2回目接種から8ヶ月以降ではなくもっと早期に開始するなど、第6波に向けて対策をしていくべきであると考えます。

さてそのような状況において、発熱外来で発熱者を診察するクリニックではどのように対策を講じるべきかを考えて、前回から2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査についてということでブログを書いております。今回がその2回目です。

インフルエンザについても現時点で流行しておりませんが、今シーズンのインフルエンザについては、新型コロナの流行に伴い、南半球での流行が2シーズンにわたって見られないことや、マスクや手洗いなどの感染対策の日常化によって『流行しないのではないか』という予測もあります。
また今年流行ったRSウイルス感染症のように、昨シーズン流行しなかったので、罹患による免疫を持っている人が少ないため、『今シーズンは流行するのではないか』という予測もあります。いずれにしても、コロナワクチンもインフルエンザワクチンも重症化を予防することが第一の目的であるので、ワクチンについては両方を接種するべきであると思います。

発熱されている患者さまが来院した際には、それぞれのワクチンの接種歴を確認したり、コロナ・インフルエンザのそれぞれの検査をすることを希望されるか確認して、対応していきたいと思っております。

2021-22冬期に当院で行えるコロナ・インフルエンザの検査を整理すると、以下の表のようになります。

新型コロナとインフルエンザの検査を発熱者に同時に行う場合、上記の表のA~D4通りの方法があります。

新型コロナに関してはPCR検査ドライケム(抗原検査)・クイックナビ(抗原検査)の3種類、インフルエンザについてはドライケムとクイックナビの2種類があります。それぞれの特徴を順次説明させていただきたいと思います。

前回のブログでは2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査について①として、検体の採取の方法(鼻ぬぐい液・鼻咽頭ぬぐい液)と、検査法としては主に当院で使用している新型コロナウイルスの抗原検査キット   クイックナビQuickNavi ™-COVID19 Ag)の有用性について説明させていただきました。

上の表でコロナの検査としてPCR検査 ― インフルの検査としてクイックナビ(抗原検査)を選んだ方法は B になります。この場合は鼻グリグリ検査(鼻咽頭ぬぐい液使用)はそれぞれに2回する必要があります。

以下にBパターンのキットの写真があります。

(インフルエンザのキット: QuickNavi ™-Flu-2 左側、コロナのPCR検査のカートリッジ:スマートジーン SARS-CoV-2 右側)。上の表とコロナ・インフルエンザの位置が逆になっておりすみません(-_-;)

インフルエンザ抗原検査  QuickNavi ™-Flu-2  陰性例

コロナの検査として抗原検査 ― インフルの検査としても抗原検査 を選んだ方法は D になります。

この場合使用するキットはインフルエンザウイルスキットとSARSコロナウイルス抗原キットが合体している QuickNavi ™-Flu+COVID19Agを使用します。この場合は鼻グリグリ検査はそれぞれに1回で済みます。

コロナ・インフルエンザ抗原検査  QuickNavi ™-Flu+COVID19Ag  陰性例

前回のメールでご説明したように、鼻ぬぐい液でも鼻咽頭ぬぐい液でも新型コロナウイルスの抗原検査キット(QuickNavi ™-COVID19 Ag)特異度は100%であるので、有症状者においては、発症から 9 日目以内で陰性であれば感染していないと診断することができます。鼻腔に綿棒を挿入することは一回だけでインフルエンザもコロナも検査することができるので、鼻グリグリの検査が苦手な人には朗報であると思います。                    またドライケム検査(後述)やPCR検査のように特別な機器は必要なく、とても簡便な検査になります。      

ウイルス抗原を検出するキットでは、判定するためのテストラインが着色する速度や、そのラインの色の濃さがウイルスの量の多さを反映しているものと思われます。
右端の滴下穴に3滴試料をたらした後、キットの中心部にある窓に少しずつ試料が浸みてきます。
検査がうまくいっているかどうかを判断するポジティブコントロールの判定ラインは青色(C)、インフルエンザA型陽性であればテストライン(A)が赤色に、 インフルエンザB型陽性であればテストライン(B)が青色に 、コロナ陽性であればSARS-CoV-2テストライン(S)が赤色に着色されます。
試料が浸みてきてテストラインに到達した途端にくっきりとラインが濃く検出されるケースは、かなりウイルス量が多い検体と思われます。PCR検査器(全自動遺伝子解析装置 Smart Gene)では通常約1時間、ドライケム抗原検査(富士ドライケムIMMUNO AG)では15分、検査結果が出るまでに時間がかかります。抗原検査ではウイルス量が多い場合は一瞬で陽性の結果が判断できることがあり、速い展開が期待できます。感度はドライケム検査・PCR検査に劣りますが、ケースによってはとても有用な検査になります。

またDパターンで検査を行った場合、患者さまが負担するコストがもっとも安くなるという利点もあります。 現状でコロナの検査を行った場合、

PCR検査であれば実施料判断料あわせて15000円分が公費に(ABパターン)、

抗原検査であれば 実施料判断料あわせて7440円分が公費に なります。(CDパターン)

インフルエンザの検査に対しては公費負担はありません。

Dパターン はコロナの検査とインフルエンザの検査を同時に行うので、実施料・判断料がコロナの公費分で賄われ、それらがかからず、インフルエンザの検査はほぼタダで(検体採取料50円のみ)で行えることになります。院外で動線を分けて診察した場合のトリアージ加算や二類感染症加算といったものが別途かかってしまうのですが、3割負担の方で負担される料金は以下のようになり、Dパターンがもっとも安くなります。

Aパターン:3割負担の方で2,510円 

Bパターン:3割負担の方で2,510

Cパターン:3割負担の方で2,080

Dパターン:3割負担の方で1,670

(トリアージ加算・ 二類感染症加算 、インフル検査実施料・判断料・検体採取料) 

 このほかに初・再診料、処方料がかかります。 

 

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