“第8波”は来るのか? 10月の菊地医院での検査数・感染者数・陽性率
オミクロン株の「BA.5」による第7波は、8月下旬にピーク(国内の1日の新規感染者数 8月19日 260922人)を迎えたあと、ほぼ2ヶ月間にわたり減少し、10月11日には1日の新規感染者数が13125人まで減少しました。
しかし、感染者数の下げ止まりが見られ、10月29日には50294人にまで増加しています。
10月の菊地医院での検査数(抗原検査・PCR検査)、感染者数、陽性率を表とグラフにして示します。
1ヶ月間の検査数は214例(抗原検査:180例、PCR検査:34例)、
陽性者数は68例( 抗原検査:58例、PCR検査:10例 )、
陽性率は32%でした。
インフルエンザの発生はありませんでした。
菊地医院でも抗原検査・PCR検合計合計陽性数は、8月の184例がピークでその後減少してきておりますが、ここにきて10月26日以降陽性率が高くなってきています。
10月30日の日曜日は医師会の休日夜診療所診療所の当番でしたが、発熱者11人に検査を行い8人が抗原検査で陽性でした。
ようやく新型コロナの「第7波」が収まってきたかというタイミングで、感染者数が再上昇する懸念があります。
このあと「第8波」は来るのでしょうか?
来るとしたら、いつ?どの程度の規模になるのでしょうか?
10月中旬からの日本国内での新規感染者数 再上昇傾向は、北日本などで特に顕著に見られます。
西ヨーロッパは日本より一足先に気温が下がり冬を迎えますが、ドイツやフランスでは10月に入り新規感染者数が増えています。
冬季になり寒くなると、屋内で過ごす機会が多くなり、人と人との距離が接近します。
寒いので換気が頻繁に行われなくなり、空気が乾燥しエアロゾルとして空中に漂う新型コロナウイルスに、飛沫感染してしまう環境が整いやすくなってしまいます。
一足先に冬を迎えた国、地域で感染者数が増えてきているのは、余談を許さない状況であると思います。
日本での新型コロナの流行を振り返っても、2021年1月に第3波、2022年1月に第6波と、真冬の時期に感染者数が大きく増加しました。
昨年の秋以降は、発熱外来での陽性者がほとんどいなかったように思いますが、年を開けて1月に爆発的に増えました。
東京医科大学病院渡航者医療センター特任教授 濱田篤郎先生によると、「第8波発生」には次の三つのシナリオが考えられるとのことです。
①「これまでに流行していた新型コロナウイルスの残り火が、寒い季節に再燃する。」
オミクロン株「BA.5」は、日本で第7波の大流行を起こしたウイルスですが、10月以降もBA.5の感染者は毎日3万~4万人発生しています。
こうしたBA.5の残り火が、気温の低下や感染対策の緩和で再燃する可能性があります。
実際に日本国内で感染者数が増加しているのも、ドイツやフランスで感染者が増えているのも、BA.5の残り火が再燃したためと考えられています。
このような形で「第8波」が始まっても、あまり大きな流行になることはないと思われます。
②「オミクロン株ウイルスの新たな派生型が流行する。」
現在、オミクロン株の派生型として注目されているものに、「XBB型」と「QS.1型」の二つがあります。
「XBB型」 は2種類のBA.2ウイルスが結合してできた派生型で、アジアを中心に世界21ヵ国からの報告があり、シンガポールでは9月末から感染者数が急増しています。日本の国内感染はまだありません。
この派生型は中和抗体が効きにくい可能性があり、BA.5よりも感染しやすいと考えられています。
もう一つの 「QS.1型」 は BA.5 の派生型で、米国やヨーロッパを中心に世界48ヵ国で報告されています。
さらに他の変異ウイルスも検出されています。
アメリカのCDC:疾病対策センターによると、10月15日時点で、
「BA.5」 が67.9%
「BA.4」 から派生した 「BA.4.6」が12.2%
「BA.5」 がさらに変異した「BQ.1」系統のウイルス 「BQ.1.1」「BQ.1」がそれぞれ5.7%
「BA.2.75」 (ケンタウロス)にさらに三つの変異が加わった 「BA.2.75.2」 が1.4%
といずれもオミクロン株の1種ですが、変異ウイルスの種類が増えています。
これらの変異ウイルスは「BA.5」と比べて、感染した場合の重症度が大きく変わるとは考えにくいものの、免疫を逃避する能力が高くなっており感染力が強まることは予想できるようです。
今は水際対策が緩和されているので、欧米での流行が起きた後、間を置かずに日本での流行が拡がってしまうことも考えられます。
③ 「オミクロンの次の変異株の出現 。」
最後に考えられるのは、オミクロン株ではない別の変異株が出現し、それが世界的な流行を引き起こすことです。
2021年11月にオミクロン株がアフリカ南部で発生し、その後2022年1月に日本で第6波が起こりました。
新しい株の流行では、ウイルスの感染力も重症度も強くなっている可能性も想定できます。
このシナリオの可能性は低いかもしれませんが、現在の日本で行われている感染対策はオミクロン株の流行であることを前提にしており、それが根底から崩れてしまうことになります。
以上のように「第8波」の流行について三つのシナリオが想定されるということですが、いずれの場合でも流行する前にオミクロン株ワクチンを接種しておくことが大切です。
10月24日よりからオミクロン株BA.5対応のワクチン接種を行っておりますが、昨年に比べ接種を希望される方が少なくなっているような印象を受けます。
BA.5の再燃であれ、新たな派生型の流行であれ、いずれもオミクロン株なので、オミクロン株ワクチンを接種しておけば、感染予防・重症化予防に一定の効果を発揮するのは間違いありません。
また別の変異株が流行したとしても、オミクロン株ワクチンには従来型も含まれているため、新型コロナウイルス全般の免疫を強化することができます。
また過去2シーズン、日本ではインフルエンザがほとんどみられなかったため、国民の間にインフルの基礎免疫・集団免疫がなくなってきているような状況です。
水際対策が緩和され、円安で外国人観光客が増え、全国旅行支援キャンペーンで国内の移動が活気づいています。
オーストラリアでは8月までに昨年の370倍となる約22万人の感染が報告されました。
韓国ではインフルエンザ患者数が前年比4倍以上に増加しています。
海外からウイルスが国内に入り込めば、3シーズンぶりのインフルエンザの流行も予想できます。
ワクチン接種による免疫効果が減衰している状況が、コロナ再燃・インフル流行といった事態に重ならないように、 2022-23秋冬シーズンの前にオミクロン株ワクチンとインフルエンザワクチンの接種を行って、準備・対策をしておくことが大切であると思います。