発熱外来が逼迫している状況、オンライン診療がそれを救えるか?
毎日、午前8時半からその日の発熱外来の予約を受けつけています。
ものすごい数の電話が毎日かかってきます。発熱外来の申し込みの電話が一日中鳴り響いています。
院内の通常の診療、エコー検査や内視鏡検査、コロナのワクチン接種といった業務を行いながらの、発熱外来の診療は20~25人くらいが、菊地医院ではやっとの状況です。
午前・午後の診療枠で院内の診療とあわせて、発熱外来診療を行いますが、発熱外来の診療枠も早い時間帯であっという間にうまってしまいます。
そのあとは、スタッフが『申し訳ありません、発熱外来の予約は朝の早い段階でいっぱいになってしまって、本日はお受けすることができません。』と恐縮しながら電話で一人一人の方に対応しています。一日中その対応をしているからスタッフも大変です。
本日は私も診療の合間に電話に出て、状況をご説明させていただきました。
このような状況は当院だけではないと思います。
日本中で、発熱外来での診療を希望する発熱者の数が多すぎて、発熱外来の数が足りない状況になっています。
今日ニュースで見たのですが、東京の北区のあるクリニックで一日中電話が鳴り止まず、200件を超える問い合わせに対して対応できるのは、10分の1にも満たないのが現状であったとのことです。
患者さまも長時間待たされて診療にたどり着くため、そのストレスや怒りがスタッフに向けられることがあり、スタッフが罵声を浴びせられてしまったりする状況を、院長先生は憂えておられました。
患者から強い口調で言われて返す言葉がなくなり、スタッフの心が萎えてしまう、耐えきれなくなるスタッフもいると話されておりました。
何十人もの方に診療を断っている状況を、とても心苦しく思われて、オンライン診療を行い通常は十数人しか診ることができないところ、20人以上の患者を診療されたとのことです。
とてつもなく発熱外来が足りない状況が分かってきたので、大規模な『特設発熱外来治療センター』みたいなものを国につくってもらえないかと要望されておりました。
今年度の診療報酬改定でオンライン診療に係わる算定要件が手厚くなり、オンライン診療を導入するクリニックも増えてきております。
菊地医院でも睡眠時無呼吸症候群の治療・禁煙療法・舌下免疫療法といった専門治療を中心に、オンライン診療が適用できないかと考え検討してまいりました。
現状ではまだその運用に対してアイデアがまとまっていない状況ではあります。
発熱のある患者さまが来院し、長時間駐車場に停めている車の中で待たされたりせずに自宅で診療を受けられる、
医療者も感染のリスクがなく安全に診療が行える、
発熱外来に対してオンライン診療を導入することは、良いアイデアなのではないかと思います。
陽性者の濃厚接触者に対して『みなし陽性者』『疑似症患者』として診断することは、オンライン診療でできると思われます。
発熱外来での診療を希望する方のニーズは、PCR検査か抗原検査を行い、コロナのウイルスが体の中に入っているかどうかきちんと診断してほしいということなのではないかと思います。
高熱などの症状がはっきりと見られる患者さまは、PCR検査でなくても抗原検査で診断できる可能性が高いと思います。むしろPCR検査よりすばやく結果が得られて(具体的にはキットに検体を滴下して数秒後でも診断できることがあります)、その後の展開が早い場合があります。
しかし検体がだ液や鼻ぬぐい液の場合は、PCR検査に比べて感度が低くなってしまうことについても、以前に発熱外来ブログでご説明させていただきました。
現状では感染者数が増加する中で、抗原検査キットも流通が悪くなり数が足りなくなっておりますが、オンラインでの診療の中で、患者さまの手元に抗原検査キットがもしあれば、医師が鼻咽頭ぬぐい液の採取の仕方を説明し、実際に患者さまに採取してもらっているところをオンライン上で確認し、その後、検査結果も確認する。
そうすれば発熱外来に来なくてもオンライン診療でコロナの診断ができて、陽性であれば保健所に発生届をそのまま提出することができて、薬が必要なら処方し自宅に届けられるのではないかと思いました。
問題はどのようにして患者さまの手元に抗原キットを届けるかということですが、事前にお薬といっしょに郵送するとか、医事承認されているキットを自治体があらかじめ配るとか、濃厚接触者であってもご家族に医院に取りに来てもらって防護服を着た医師が院外でお渡しするとか、なんとか良い方法はないものかといろいろ考えました。
前述の北区のクリニックの院長先生と同じように、毎日何十人もの発熱外来への問い合わせをお断りしていることをとても心苦しく思い、その方たちの何人かでも診療できる方法はないかと思い、いろいろと考えてみました。
個人や小さなクリニックでできることは限られており、大規模な国の体制づくりがまず必要と思われますが、オンライン診療の導入については引き続き努力をしてまいりたいと考えております。