蕨市の菊地医院 内科、小児科、外科、皮膚科の診療

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発熱外来ブログ

濃厚接触者がPCR検査を受けるタイミングについて

2022.03.22

発熱・咳・咽頭通などの症状がはっきりとみられる方には、抗原検査ドライケム抗原検査も含む)を用いて検査を行い、陽性と診断できることが多くあります。
顕著な症状がみられない方にはPCR検査を行い対応しております。

陽性と診断された方のご家族や同居者(濃厚接触者)が、PCR検査を受けたいと希望されることも多くあります。

国立感染症研究所は濃厚接触者を以下のように定義しています。

・患者と同居している
・患者と長時間、車内や飛行機のなかなどで接触している
・1メートル以内で、感染予防策なしで患者と15分以上接触した人
・医療、介護従事者のうち、適切な感染防護をせずに患者を診察、看護、介護した人
・患者の気道分泌液や体液など汚染物質に、直接触れた可能性が高い人

ここでいう「患者」とは、
・コロナ感染症の発症が確定している人と、
・無症状ながら病原体を保有している人のことです。

感染可能期間」とは、
患者が症状を呈した2日前から、退院または宿泊療養・自宅療養の解除の基準を満たすまでの期間、
無症状病原体保有者の感染可能期間は、陽性確定に係る検体採取日の2日前から、 退院または宿泊療養・自宅療養の解除の基準を満たすまでの期間 ということになっております。

濃厚接触者になってしまった方は、コロナ感染症陽性判明者と最終接触があった日を0日として翌日から7日間は、
外出の自粛自宅待機)と健康観察が必要になります。

濃厚接触者である同居家族などの待期期間については、
陽性者の発症日陽性者が無症状の場合は検体採取日
陽性者の発症などにより住居内にて感染対策を講じた日
のいづれか遅い方を最終接触日0日目として7日間の自宅待機が必要になります。

同居の方が陽性者と診断されたら、発生届が提出されその後保健所からの連絡が来る前から、
・家庭内でマスクの着用
・手洗い
・手指消毒の実施
・物資の共有を避ける
・消毒を行う
などの感染対策を速やかに行うことが必要です。
感染者がとても多く保健所もひっ迫しているため、連絡がすぐにこないこともあります。

菊地医院では濃厚接触者になられた方には、以下の資料をお渡ししています。

症状のあるコロナ陽性者発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過した後に療養が解除されます。

症状のない陽性者は、検体採取日から7日間を経過した場合に療養機関が解除されます。

菊地医院では、新型コロナウイルス感染症が陽性と診断された方には、以下の資料をお渡ししています。

さて、同居家族がコロナ陽性と診断された無症状の濃厚接触者にPCR検査を行い、その結果が陰性であったとします。
この陰性の意味については、以下の2つのパターンが考えられると思います。

陽性者から感染していない
 (陽性者が自宅療養の場合、療養期間中にその後感染する可能性は残されています。)

感染していて潜伏期間であり、ウイルス量が少なかったため、PCR検査で陰性となった(偽陰性)。

今までにも(従来株)、濃厚接触者に対してPCR検査を行い当日は陰性の結果でしたが、翌日以降に症状が現れ、再度検査をすると陽転していたケースは多くあります。
②のケースはそれに相当します。

それなので同居家族が陽性と診断された直後、すぐにご家族がPCR検査を行うことは、自分が感染しているかどうかとても心配であると思いますが、あまりおすすめできません。
濃厚接触者の療養期間が解除される前までに健康観察をしながら、もし感染しているとするならばある程度ウイルス量が増えていると思われるタイミングで、PCR検査を行うことが良いと考えます。
菊地医院で行っているPCR検査は約1時間で結果が出ます。
検査会社に検体を提出する場合は、結果が出るまでに数日間かかる場合もあります。

社会機能維持者に対しては、陽性者と接触があった日を0日(最終暴露日)として翌日から4日目および5日目に抗原定性検査を行い陰性であれば待機を解除する地方自治体があります。
5日目にPCR検査あるいは抗原定量検査を受けて、陰性であれば解除可能とする自治体もありますので、社会機能維持者でなければ解除はされませんが、5日目くらいにPCR検査を受けて陰性であればまず感染していないと考えても良いのかもしれません。

陽性者の同居家族が自宅療養期間中に症状がみられた場合は、「みなし陽性」と判断されて感染者と同様に保健所に発生届が提出され、保健所による健康観察が受けられる場合があります。
みなし陽性者は正式には「疑似症患者」と呼ばれます。
この場合も陽性者と同様に療養期間は10日間になります。
抗原検査やPCR検査の備品が不足していることや、検査を行う医療機関が少なく、検査を受けるまでに時間がかかってしまう現状からは仕方のないことなのかもしれませんが、認められた症状が新型コロナウイルス感染症によるものかどうかを確定するためには、検査をするほかには方法はありません。

感度・特異度に優れるPCR検査でも、陽性と診断するためにはある程度のウイルス量が必要になるのだと思います。

発症からの日数と患者のウイルス排出量を、季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症で比較したグラフを示します。(出典:インフルエンザと新型コロナの発症前後の感染性の違い:大阪大学 忽那賢志先生)

潜伏期を経て発症し、症状のみられる有症状期に移行しますが、季節性インフルエンザでは発症後にウイルス排出量がピークに達します(感染性ピーク)。
インフルエンザの場合、熱などの症状がみられてから数時間しか経過していない発症早期に、通常の抗原検査を行っても結果が陰性になってしまい、感度に優れるドライケム抗原検査で再検してやっと陽性と診断できたり、ウイルス量の増えた翌日に検査して陽性と診断し得たケースを多く経験しました。

右側のグラフのように、デルタ株などの新型コロナの従来株では、発症前後に感染性ピークがあることが特徴であり、症状の見られた当日から9日目までに抗原検査で陰性となった場合には、新型コロナではないと言い切ることが可能でした。

オミクロン株のウイルス表面のスパイク蛋白質は、細胞表面のACE2への親和性が高く、従来株に比べて細胞に侵入しやすくなっています。
またデルタ株に比べて伝播性が高いことも示唆されています。
移りやすいし拡がりやすいということになります。
オミクロン株にはBA.1系統BA.2系統BA.3系統が位置づけられており、日本を含め世界的な主流はBA.1です。
今後日本でもBA.1.1からBA.2への置き換わりが加速していくものと思われます。
BA.2株はBA.1株よりも実行再生産数(1人の感染者が次に平均で何人にうつすかを示す指標)が、18%~26%高いと言われており、BA.2はさらに感染力が高くなっています。

BA.2の情報は限定的であり、発症前後のウイルス排出量の推移についてくわしいデータは分かりませんが、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの研究では、オミクロン株症例において、ウイルスRNA量は診断日および発症日から3~6日で最も高くなり、その後日数が経過するにつれて、低下傾向であったとのことです。(国立感染症研究所. SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査:新型コロナワクチン未接種者におけるウイルス排出期間(第2報))。

インフルエンザ新型コロナ従来株BA.2ウイルス排出量の推移を表すグラフをイメージ化してみました。
BA.2は発症後ウイルス排出量が最も多くなる感染性ピークが、従来株よりも遅く、季節性インフルエンザよりも遅く到来する可能性もあります。

発熱外来ブログ、ウイルスの検出感度 抗原検査<ドライケム抗原検査<PCR検査 にて発症早期と思われる新型コロナウイルス感染症で、通常の抗原検査では陰性、ドライケム抗原検査で陽性、PCR検査で陽性(スマートジーン 45サイクル中33サイクル目で陽性)になったケースを提示しました。
発症早期でウイルス量が少なく、より感度の高い検査で陽性になり、PCR検査でも陽性になるまでに33サイクル要したケースであったと思われます。
また陽性者の同居家族(無症状)の方のPCR検査で、40サイクル以上でやっと陽性になり、やはり発症初期でウイルス量がきわめて少ない段階で陽性と診断できたケースも経験しております。
濃厚接触者の小児の患者さまで、PCR検査の結果1日目は41サイクル目で陽性、微熱程度の症状しかなかったのですが、2日目に検査したところ33サイクル目で陽性でした。やはり発症早期でゆっくりとウイルス排出量が増えていました。
このようなケースでは、検査のタイミングが早いと結果が偽陰性になってしまうリスクがあると思われます。
同居者がコロナ陽性であった家族へのPCR検査のタイミングは、上記のことから、同居者の陽性判明日から4~5日経過し、感染したとするならばある程度ウイルス量が増えていると思われる時期に行うことが、偽陰性のリスクを減らしていくのではないかと思われました。

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