新型コロナウイルス感染症の終わり方 3月の菊地医院での検査数・感染者数・陽性率
新型コロナウイルス感染症の国内初感染が確認されたのは、2020年1月16日になります。
それから2年以上、日本人はこのウイルスに振り回されています。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行・感染爆発)はいつ終わり、どのように収束していくのでしょうか?
過去にもペスト(黒死病)や天然痘、インフルエンザ(スペインかぜ)といった感染症が世界的に大流行し、パンデミックを引き起こしました。
歴史学者によると、パンデミックの終わり方には次の2通りがあるとのことです(The New York Times Gina Kolata記者の記事より)。
・医学的な終息 罹患率と死亡率が大きく減少して終わる。
・社会的な終息 病気に対する恐怖心が薄れてきて終わる。
社会的な終息とは、病気が抑え込まれることにより終わるのではなく、人々がパニック状態に疲れて、
「もういい加減にうんざりだ。」、「もう普通の生活に戻ってもいいはずだ。」と言い出して、病気とともに生きるようになることにより、パンデミックが終わるということを意味します。
新型コロナについても医学的に終息する前に、人々がさまざまな制約に嫌気がさして、まだウイルスがくすぶっていても、ワクチンや効果的な治療法が開発されていなくても、もうパンデミックが終わったと判断して行動してしまう・・・・
ウイルス自身も生存していくために弱毒化していき、感染性・伝搬性が強くなり、うつりやすく拡がりやすくなっていく、国民の多数が感染することにより集団免疫が獲得される、現状でもそのようにして医学的な終息に向かっているのかもしれません。
人々が「絶対にうつりたくない。」ではなく「うつってもしかたがない。」という意識に変わったときに、社会的な終息を迎えつつあるのかもしれません。
最近の幼稚園・保育園、学校で感染する子供が多数出て、家庭内で親がうつってしまう状況、発熱などの症状が強く出ている若い人たちを検査すると多くが陽性であることが日常茶飯事になっていて、罹ってしまった人が特別扱いされることもなくなってきたように思います。
世界に蔓延した新しい感染症により、社会経済が不健康な状況に追い込まれている、経済をまわしていかなければならないという議論の中で、いわゆる「終わり」は医学的なデータによって決まるのではなく、社会政治的なプロセスによって決まるのではないかと、多くの人が思っている(ハーバード大学の歴史学者 アラン・ブラント)。
2月中旬には日本国内で一日当たりの死者数が200人を上回ることもあり、2月22日には322人と過去最多になりました。その後は死者数・重症者数ともに減少してきています。
発熱外来で毎日検査をして、陽性になる人が何人もいます。
たいていの人は発熱や咽頭痛、咳などの症状のみで軽症であると判断し経過をみますが、数日で軽快しています。
しかしコロナが治ったと思ったら2週間以上経過したあとに、倦怠感・息切れ・頭痛・嗅覚障害・せきなどの後遺症が現れ、急性期の症状とは別の症状に苦しむ方が多くいるとのことです。
まだまだ 「うつってもしかたがない。」 とはとても思えない状況であると感じます。
繰り返し襲来した新型コロナの感染の波に対して、判断や決定が後手後手になり英断ができなかった人たち。
日本人がもっと速く、多くの人たちがワクチンを接種できる環境、誰もが検査を受けれて必要な人が不安なく治療や療養を行うことができる体制、それらのことに対してたいした実績を残せていない方々の、新型コロナを現行の指定感染症2類相当からインフル並みの5類に引き下げようとする考えや発言を耳にすると、言うのは簡単だけど一人一人の命をどれだけ軽く考えているのだろうと思ってしまいます。
前にも書きましたが、感染症の類型を見直したり、規制を行ったりする国のトップの方々や政治家には、変異を繰り返していくウイルスの前では、慎重であり、その自然科学の現象の前では謙虚であってほしいと思います。
新型コロナの社会的な終息は、そうした人たちの社会政治的な決定によって促されるものではないと思います。
多くの国民が コロナに対する恐怖心が薄れてきて終わる ものであり、私はまだまだコロナが怖いし、罹りたくないと思っています。
さて、3月の菊地医院での検査数(抗原検査・PCR検査)、感染者数、陽性率を表とグラフにして示します。
1ヶ月間の検査数は267例(抗原検査:186例、PCR検査:81例)、
陽性者数は116例( 抗原検査:94例、PCR検査:22例 )、
陽性率は43%でした。
熱発など明らかな症状がある人は抗原検査(ドライケム抗原検査を含む)にて検査を行っております。
抗原検査での陽性率は50.5%と5割以上になっています。
PCR検査は無症状の濃厚接触者や、症状の軽い人対して行っておりますが、1月・2月に比べ3月は陽性率が27%と上がってきています。
症状が出る前の潜伏期・発症早期のウイルス量が少ない時期に、陽性と診断できるケースが増えてきているのではないかと思います。
検査ができる発熱外来を探して、蕨・戸田市以外の方からの問い合わせも多く、ここ数日間の菊地医院のホームページへの訪問者数は一日900人以上で、1000人近くなる日もあります(3/31日は1152名)。
新型コロナウイルス感染症に対する国民の意識は高く、 病気に対する恐怖心は薄れておらず、社会的な終息にはまだまだ時間を要するのではないかと思います。