新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの重複感染
昨年もご報告させていただきましたが、検査の結果、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とインフルエンザが同時感染していると思われるケースを経験しましたので、お伝えさせていただきます。
昨日、発熱で来院された患者さまにドライケム抗原検査でインフルエンザと COVID-19 の両方を検査したところ、両方とも陽性の結果が出ました。
コロナについては15分後に陽性なら(+)という結果が出ます。
COVID19:(+)という結果でしたので新型コロナウイルス感染症に罹っているという結果でした。
インフルエンザについては、
A:(+)
B:(ー)
という結果でした。
ウイルス量の多い検体では、1段階目で陽性になりカッコは付かない+という表示になります。
カッコ付きの (+) という意味は、イムノクロマト法の検出感度を高めた2段階目でやっと陽性になったということを表わしますので、ウイルス量の少ないA型インフルエンザを診断することができたということになります。
つまり新型コロナウイルス感染症とインフルエンザA型の同時感染という結果になりました。
インフルエンザは今季、当院で10例目になります。
新型コロナウイルス感染症には罹っていて、インフルエンザについては擬陽性であった可能性は考えられます。
長崎大学と原爆後障害医療研究所の共同研究の論文が2021年10月28日にオンライン学術誌“Scientific Reports”に掲載されました。この論文では、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが重複感染すると肺炎が重症化・長期化する可能性を示しました。
新型コロナウイルスとA型インフルエンザウイルスは、どちらも飛沫感染する呼吸器感染症の病原体で、パンデミックを起こすことが知られています。
インフルエンザは世界中で毎年季節性に流行し、多くの患者が報告されますが、昨シーズンは世界的に患者数が激減しました。その理由として、世界的な人・物の移動の制限、マスクの着用、手洗いの励行、密を避ける行動などの新型コロナ対策が功を奏したという考え方に加えて、新型コロナウイルス感染によるウイルス干渉を理由に挙げる専門家もいます。ウイルス干渉は、特定のウイルスが感染すると他のウイルスの感染/増殖を抑制するという現象であり、双方のウイルスの増殖が抑制されることもあります。
双方のウイルスは個体レベル、臓器レベル(肺)ではウイルス干渉を起こさないが、細胞レベルでのウイルス干渉は起こり得るということが示されました。つまり、両ウイルスの重複感染と同時流行は起こり得るということを示唆しています。
インフルエンザは通常北半球での流行に先駆けて、季節が逆の南半球で日本の夏の時期に流行することが知られています。昨年の夏も南半球での流行は報告されなかったので、今シーズンも流行しないのではないかと見られていました。
そして今季日本では、インフルエンザは珍しい疾患になっております。
昨シーズン、インフルエンザと同様に感染者数が激減した小児のRSウイルス感染症が夏には流行し、多くの感染者が報告されたことから、インフルエンザが流行しないという保証はありませんでした。
この研究では新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが重複感染すると肺炎が重症化・長期化する可能性も示されました。
イムノクロマト法 の抗原検査では、インフルエンザと COVID-19 の両方の検査を同時に行えるキットがあります。
ドライケム抗原検査でも、一回の鼻咽頭ぬぐい液の検体で両方の検査を行うことができます。
インフルエンザは季節性がなくなり、年間を通して発症が見られるようになってきました。
数年間流行がみられないと、集団免疫がなくなりいつ爆発的に流行してもおかしくありません。
新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの重複感染が、肺炎を重症化・長期化する リスクを有するなら、 COVID-19 陽性の患者さまのインフルエンザ感染の有無について調べておくことは、重要なのではないかと思われます。