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発熱外来ブログ

コロナ関連ニュース―PCR検査

2020.05.30

日本におけるPCR検査の件数が諸外国に比べて圧倒的に少ないことが問題になりました。

昔、四半世紀近く前のことですが、病理学教室の大学院生だった時に、PCR検査を使った実験をしていました。
病理組織診断をするためにホルマリンで固定され、パラフィン包埋された標本材料から、結核菌のDNAを抽出し、PCR法を用いて増幅し、結核菌の存在を証明する研究です。

PCR(polymerase chain reaction)検査は医学の広い分野で応用されている遺伝子増幅法であり、ごく微量の遺伝子の検出にその威力を発揮します。PCR検査は感度、特異性に優れコロナウイルス感染症の診断についても、鼻腔・咽頭ぬぐい液などの新鮮検体中のコロナウイルスだけが持つ遺伝子を増幅し、検出することが可能です。しかし問題点としては検査に時間や手間がかかること、検査の各操作過程においてDNA混入(contamination)により偽陽性反応が起こりうることなどがあげられます。

自分で実験していた時も、最初はなかなか実験が成功したことを示すバンドが検出されなかったのですが、ある日、1本のバンドが出現し大喜びしました。しかし、その後何回実験しても濃いバンドが出現するようになりました。原因はpositive control(陽性対照)として利用した生の結核菌から抽出したDNAが試薬に混入したり、器具に付着し汚染されたためです。それからどの操作過程でcontaminationが起こったかを見極めるのに大変苦労したことを思い出します。
PCRによりDNA断片を複製させる機器をサーマルサイクラーといいますが、1回の行程で何時間もかかるので、実験当直して徹夜でその機器と格闘していたことを懐かしく思い出します。

PCR法はこんな昔からあって、日常的に検査会社で検査することができます。民間の検査会社でPCR検査をする余力は十分にあるはずで、大学の研究室にもサーマルサイクラーはたくさんあります。現在はマイコプラズマだけに対象が限られておりますが、ある会社のサーマルサイクラーはとても安価でクリニックでも購入が可能なくらいです。新型コロナウイルス感染症に対してももうすぐ検査ができるようになると思われます。
PCR検査をして陽性の人がたくさん見つかってしまうと、入院させるベッドが足りなくなり医療崩壊のリスクがあることはよく理解できます。
韓国などではドライブスルーで検査ができますが、日本においてはどうも積極的に増やそうとしてこなかったのではないかと、思えて仕方がないのです。

新型コロナウイルスはジワジワ、ゆっくりと増えるのが特徴です。感染してから数日してからやっとウイルスが増え始め、それに対して体が反応してゆっくりと免疫反応が起こってきます。多くの人では感染しても全く症状がないのですが、恐ろしいことに症状がなくてもウイルスは肺の中で増えている場合があるということが分かっています。免疫反応がゆっくりとしか起こらないため、ウイルスはダラダラ、ダラダラと体の中で増え続けていて、感染してから2週間、3週間経過してもまだウイルスを出している人がいます。これがこのウイルスの怖いところです。
感染経路を追えなくなった陽性者が大勢になってきたら、クラスターや濃厚接触者を追いかけていってもあまり意味がないような気がします。
感染しても全く症状がなく、自分が感染していると思っていなくて、ウイルスを出していて他人に感染させているような人たちを、たくさん検査して見つけて隔離するしかないのでは・・・。
PCR検査の順番待ちで自宅で待機する。陽性になっていても入院できずに待たされる。
他人からうつされるのもイヤだし、他人にうつすのもイヤだ。
症状があって疑わしい人は、自分の家にいないといけない。でも大切な家族には絶対にうつしたくない。
それだったら検査をして自分が罹っているかいないかを知りたい。誰だってそう思うはずです。
臨床的な症状、感染してからの時期・経過を総合的に考えて、PCR検査と抗原・抗体検査を組み合わせて、多くの陽性患者を拾い上げていくべきだと考えます。

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