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発熱外来ブログ

コロナワクチンを接種した後 、 8ヶ月経過した時点の中和抗体値(菊地医院)

2022.02.16

一日10万人を超えていた日本の新型コロナウイルス感染症の感染者数が、2月5日に10万5620人でピークに達した後、減少に転じてきています。
1月初めに始まったオミクロン株による第6波の勢いが、1ヶ月でピークアウトし始めたのではないかとの期待があります。
一方で2月15日、新たに報告された死者数は236人で、初めて200人を超え過去最多となりました。

今後オミクロン株の主流株『BA.1』に比べ、感染力が1.5倍強いと言われる『BA.2』という亜種に切り替わっていく可能性があり、第6波に紛れて気付かないうちに第7波が始まることも考えられます。

猛威を振るうオミクロンに対し、3回目のコロナワクチンの追加接種が急がれておりますが、2月14日の時点で3回目の接種を受けた人は全人口の9.4%に留まっております。

横浜市立大学などの研究グループは、ファイザー社製ワクチンを2回接種後6ヶ月経過した医療従事者98名の、血液中の抗体価中和抗体価・抗原特異的な細胞性免疫応答を測定しました。
接種1~3週後(抗体ピーク時)と比べ、6ヶ月後の抗体価は90%減少、中和抗体は約80%減少し、その陽性率は85.7%でした。
飲酒習慣がある人や年齢が高いほど、6ヶ月時点での抗体価が低い傾向がありました。

ワクチン接種後6ヶ月経過した時点で、抗体価はほとんどのワクチン接種者が陽性であったものの、ピーク時と比較して顕著な減少傾向を示すことが明らかになりました。
また、新型コロナウイルスワクチンによる宿主免疫応答の一つとして細胞性免疫が誘導され、6ヶ月程度は維持されることも示唆されました。

昨年10月24日にコロナ関連ニュース―中和抗体検査④として、菊地医院で検査したコロナワクチン2回目接種後の中和抗体値が、日数の経過とともにどのように変化するかをグラフ化して紹介しました。

検査をした中和抗体の値を縦軸に、そして2回目接種を完了してからの日数を横軸にして、グラフ化しました。

青い折れ線男性オレンジの線女性ですが、男女ともに2回目接種からの日数が経過するにつれ、抗体価が低下しているのが明らかになりました。
男性の方が40日を経過したくらいから抗体価が一気に低下しており、女性の方がなだらかに低下していく傾向がありました。
グラフでは4ヶ月目には男女ともに抗体価はかなり低下しておりました。
2回目接種を完了した後に、日数の経過とともに中和抗体の値が徐々に減少していくことは明らかになりました。

今回、3回目の接種を前に8ヶ月経過した時点での中和抗体価を測定し、再度グラフ化してみました。

中和抗体値には個人差があり、接種後4ヶ月以上経過した時点でもかなり高い値を示す人もおりました。
データの推移をおおまかに表わした近似曲線を追加すると、グラフの青い直線のような結果になりました。
抗体値は10~20位まで低下し、2回目接種後のピーク時より顕著に低下し、前述の横浜市立大学のデータと同様の結果になりました。
15分以内に新型コロナウイルスのSタンパク質に対するIgG抗体(ワクチン接種後の抗体保有状態を表わす)を検出できる迅速定性検査では、定量した抗体値が10くらいの検体では陽性ラインが検出されずに陰性になってしまいます。

2回目ワクチン接種後、中和抗体値が80%も減少するのであれば、ワクチンの効果はなくなってしまうのでしょうか?
3回目を接種してもまた日数が経過すれば、中和抗体値は低下してくるものと考えられます。

ワクチンを接種すると、
◯ウイルスのSタンパク質に対する抗体が産生される「液性免疫

抗ウイルス活性をもつ免疫細胞が誘導される細胞性免疫」の2つが主に獲得されます。

これらの相乗効果によりウイルス感染そのものや重症化が顕著に抑制されることが知られています。 

横浜市立大学の研究では、Sタンパク質の受容体結合領域に結合するIgG抗体量を定量的に調べたほか、細胞性免疫については、ウイルスタンパク質断片の刺激に対してインターフェロンγを産生する免疫細胞(CD4陽性あるいはCD8陽性T細胞)数を調べています。 
さらに、血液から末梢血単核球(PBMC)を分離し、新型コロナウイルスに対するT細胞応答を検出するキットを用いて、S抗原特異的にインターフェロンγを産生する細胞数、すなわち細胞性免疫応答の強さを測定しています。 
その結果、新型コロナウイルスワクチンによる宿主免疫応答の1つとして細胞性免疫が誘導され、6ヵ月程度は維持されることが示唆されています。

中和抗体値が時間とともに低下しても、ワクチン接種により細胞性免疫が獲得されることにより、一定の期間、感染の防御と重症化予防の効果が維持されるものと思われます。

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