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発熱外来ブログ

コロナに何回もかかる?

2022.10.07

本日、1歳10ヶ月の女の子が夕方から38.9度の発熱があり、夜の発熱外来を受診されました。
PCR検査を行ったところ、陽性の結果が出ました。
この子は実は、
・7月19日に他院で抗原、PCR検査で陽性を確認、
・8月18日に当院で抗原検査で陽性を確認しており、
今回が3回目の新型コロナウイルス感染症の感染ということになります。
わずか3ヶ月足らずの間に続けて3回もコロナに感染してしまうことがあるのでしょうか?

本日は念のため、イムノクロマト法による一般の抗原検査、ドライケム抗原検査でも検査し、どちらとも陽性の結果が得られました。

左側:PCR検査 
   45サイクルかけて増幅しますが25サイクル目で陽性になっており、発症間もないですがウイルス量は多い状況です。

中央:ドライケム抗原検査で陽性確認

右側:抗原検査で陽性確認 インフルエンザは陰性でした。

新型コロナウイルスの変異株の中でも感染力の強いオミクロン株の出現により、再感染率が上昇し、米国では3度目、4度目の感染をする人さえいるようです。
またオミクロン株の亜系統はこれまでに獲得された免疫を回避する能力が高いことも研究で判明しています。

インドで拡がりを見せ、日本でも置き換わりが懸念されているケンタウロスBA.2.75 はBA.2に比べて スパイクタンパク質 に数カ所の変異が加わっており、ワクチンの接種で得られた中和抗体を逃避する性質を持っているとのことです。つまりBA.2やBA.5に感染した人も BA.2.75 には感染するかもしれないということになります。

現時点では『再感染』の定義が統一されておらず、
・英保健当局の定義では、最初の感染から2回目の感染まで90日以上経過している必要がある、ということであり、
・欧州疾病管理予防センタ-(ECDC)では、以前の感染から最低60日間という短い期間を設定しています。

上述した女の子は1回目の感染から2回目の感染まで30日間、2回目の感染から3回目の感染までは50日間であり、英国・欧州のどちらの定義にも当てはまりません。
再感染ではなく、体の中でくすぶっていて消えかけていたウイルスが再度増殖したということなのでしょうか?

デンマークの研究者の論文によると、オミクロン株「BA.1」系統に感染後、すぐに 「BA.2」系統 に再感染することはあり、最初の感染からわずか20日で再感染した人もいて、再感染と判定するために最低60日間の間隔を置くことの妥当性について、疑問を投げかけています。

本日、PCR検査を行った別の男性ですが、9月24日にコロナ陽性を確認し、自宅での療養期間を終えて本日が感染後13日目でした。
会社から職場復帰をする前に、PCR検査で陰性を確認してきてほしいという要望があって、自費で検査を行いました。
新型コロナウイルスは免疫反応がゆっくりとしか起こらないため、ウイルスはダラダラ、ダラダラと体の中で増え続けていて、他人に感染させるかどうかは別として感染してから2週間、3週間経過してもまだウイルスを出している人がいます。
またPCR検査は感度、特異性に優れコロナウイルス感染症の診断についても、鼻腔・咽頭ぬぐい液などの新鮮検体中のコロナウイルスだけが持つ遺伝子を増幅し、検出することが可能です。
しかしウイルスの残骸の遺伝子の断片も検出し増幅しますので、まだ 感染後13日 しか経過していないならば、会社のニーズであるPCR検査の結果が陰性になるという結果が得られない可能性があるということを、あらかじめお話しさせていただきました。

案の定、 PCR検査の結果は陽性であり、 45サイクルかけて増幅しますが42サイクル目でやっと陽性になりました。
これは上述の女の子の25サイクル目に陽性になった結果とは、同じ陽性でも異なっていて、
・女の子はウイルス量が多く、他人に感染させやすい状態
・男性の方は、陽性の結果ですが、40サイクル台での陽性はほぼ他人に感染させるリスクはなく、療養期間も空けており社会復帰は問題がないという判断になるかと思われます。

女の子も1回目の感染、2回目の感染のあと2週間くらい経過したタイミングでPCR検査を行えば、それぞれ上記の男性のように40サイクル台での陽性が確認できた可能性はあります。
その後体の中に残っているウイルスが完全に消えず、1回目の感染から30日後に再び増殖して発熱、2回目の感染からまた50日目に増殖してPCR検査でウイルスの多い状態を確認できたのかもしれませんが、それぞれの感染がオミクロン株の異なる亜系統によるものであり、一度ウイルスが消失してから再度感染したものである可能性も考えられます。
それぞれの感染時の検体をゲノム解析して株や亜種をつきとめればはっきりすることなのかもしれません。


感染者の療養期間が10日から7日に短くなったり、医療機関が発生届を出さなくなったり、コロナ陽性者の対応が変わってきておりますが、この病気にはまだまだ分からないことがたくさんあり、病気の裏側にも不安や恐怖、偏見が存在しています。
ただ、コロナの再感染がリスクをもたらすものであるということは、事実の様です。
感染回数が増えるごとに死亡率が高まり、再感染によって糖尿病・慢性疲労・コロナの後遺症などや、心臓疾患・血液疾患・脳疾患による健康リスクが発生する割合が増えてしまうとのことです。

麻疹(はしか)、風疹などは2度目の感染を心配する必要があまりない疾患です。
これらの病気に一度罹るか、ワクチン接種をすることにより、長期間持続する免疫を獲得できます。
インフルエンザは最近はあまり見かけておりませんが、毎年流行する株が異なり、繰り返し罹ってしまう可能性があります。1シーズンにA型とB型の両方に罹る人もいます。
毎年、その年のワクチンを接種する必要があります。
鼻かぜの15%を占める、普通感冒の原因となる、新型ではない通常のコロナウイルスには、人間は一生の間に何度も感染と再感染を繰り返します。
そのコロナウイルスの感染・再感染の自然なリズムを、新型コロナウイルスも模倣し始めているとするならば、これから先、人は何回も新型コロナの感染・再感染を繰り返すようになり、インフルエンザと同じように毎年ワクチン接種をしなければならなくなるのかもしれません。

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