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発熱外来ブログ

コロナとインフルの同時流行:ツインデミック コロナとインフルの同時PCR検査

2022.06.24

東京都内の公立小学校でおよそ2年3ヶ月ぶりとなる、インフルエンザによる学級閉鎖がありました。
コロナが流行する前の2018-19年には、インフルエンザによる学級閉鎖は7000件を超えていましたが、コロナ渦になってからは学級閉鎖はほとんどありませんでした。

新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスは、どちらも飛沫感染する呼吸器感染症の病原体で、パンデミックを起こすことが知られています。
インフルエンザは世界中で毎年季節性に流行し、多くの患者が報告されますが、この2シーズンは世界的に患者数が激減しました。その理由として、世界的な人・物の移動の制限、マスクの着用、手洗いの励行、密を避ける行動などの新型コロナ対策が功を奏したという考え方に加えて、新型コロナウイルス感染によるウイルス干渉を理由に挙げる専門家もいます。ウイルス干渉は、特定のウイルスが感染すると他のウイルスの感染/増殖を抑制するという現象です。

インフルエンザに関しては日本国内で、今シーズンは例年より早く夏にも流行する危険を指摘されていました。
南半球のオーストラリアでは、現在若者を中心にインフルエンザが流行しています。
風邪の症状で来院する人の1/3がコロナ、1/3がインフルエンザA型、残りの1/3が他の風邪という状況です。
10代、20代の若者、子供がコロナとインフルエンザの両方に罹ってしまう可能性が非常に高いとのことで、それぞれのワクチンをダブルで接種することが重要になってきています。

オーストラリアで現在起きていることが、半年後の日本で起こる状況なのでしょうか?
オーストラリアで季節を前倒ししたインフルエンザの大流行が起きている理由は、以下の二つがあるとのことです。
①一つは過去2年間、大きなインフルエンザの流行がなかったため、インフルエンザの基礎免疫がなくなっている、
②コロナ対策の緩和により、マスクを外すことが多くなっている、
の二つです。
日本でもこれからマスクの着用が緩和されてくると飛沫感染が起こりやすくなり、上記の二つは日本の現状にも当てはまります。空気が乾燥していない夏期はインフルエンザの流行は局地的なものにおさまると思われますが、2022-23年の秋冬シーズンはインフルエンザとコロナの同時流行ツインデミックの懸念があります。
発熱外来に発熱の患者さまが来られたときに、コロナに罹っているのか、インフルエンザに罹っているのか分からなくなってきます。
夏を前倒ししてインフルエンザの流行が見られれば、新型コロナの対策、熱中症対策に加えて、インフルエンザの対策までしなくてはなりません。

2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査についての発熱外来ブログでも書いてきましたが、今まではインフルエンザはほとんど見られないめずらしい疾患になっておりましたが、私は高熱の方に積極的に両方の検査を行ってまいりました。
その理由は、ドライケム抗原検査・抗原検査ともに一回の鼻グリグリ(鼻咽頭ぬぐい液採取)で両方の検査が行え、2回しなくてもすむこと、また新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの重複感染のブログでも書きましたが、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが重複感染すると肺炎が重症化・長期化する可能性があり、COVID-19 陽性の患者さまのインフルエンザ感染の有無について調べておくことは、重要であると思っているからです。

2021-22の秋冬シーズンに当院では10数例のインフルエンザを診断し、そのうち6~7例のインフル・コロナの重複感染を経験しました。
過去にそのケースをブログで紹介してきましたが、そのうちの何例かはインフルエンザについては擬陽性であったと思っています。
重複感染が疑われた場合には、必ず他の検査法で再確認します。
前回ご紹介したケースは、発熱で来院された患者さまにドライケム抗原検査でインフルエンザと COVID-19 の両方を検査し、インフルエンザA型とコロナの重複感染の結果が出ていました。

先日のケースは同様にドライケム抗原検査 を行ったところインフルエンザB型とコロナが陽性でした。

ドライケム抗原検査よりは感度が下がりますが、通常の抗原検査で再確認した結果、インフルエンザもコロナも陰性でした。
デンシトメトリー分析装置(スマート QC リーダー)にかけ、プリントアウトした結果が右側ですが、その結果もそれぞれ陰性です。


当院に3台あるPCR検査機器:スマートジーンに使用できるテストカートリッジとして、A型およびB型のインフルエンザウイルスRNAを検出できる新しいキット:スマートジーン Flu A、Bが開発されました。
インフルエンザに対し、通常のイムノクロマト法による抗原検査、ドライケム抗原検査に加えて、PCR検査法を用いて検査を行うことができるようになったということです。
もちろん 一回の鼻グリグリ(鼻咽頭ぬぐい液採取)で得られた検体を用いて、インフルエンザとコロナを検査することができます。
今までに抗原検査・ドライケム抗原検査はそれぞれ一回の検体採取でインフルエンザ・コロナ両方の検査を行うことができました。スマートジーンを用いたPCR検査でもそれが可能になったということです。

上記のドライケム抗原検査で重複感染が疑われたケースでは、PCR検査でコロナの感染を再確認し、その結果は陰性でした。ドライケム抗原検査のコロナ陽性の結果は擬陽性であったと思われます。

さて、ドライケム抗原検査のインフル陽性の結果についても再確認が必要と思われ、 スマートジーン Flu A、B を用いてPCR検査で再確認しました。
6/16に採取した検体を冷凍保存し、試薬が届いた本日、解凍して検査を行いました。
その結果も陰性でした。
ドライケム抗原検査では重複感染が疑われましたが、他の異なる検査法でそれぞれ検査した結果、コロナについてもインフルエンザについても擬陽性であった可能性が高いと思われます。

23年の秋冬シーズンにインフルエンザとコロナの同時流行ツインデミックの懸念が あることは、大変な脅威であると思われます。
それでも一回の鼻ツッコミ検査でコロナとインフルエンザの両方のPCR検査が行えるようになるかもしれないことは朗報です。
検査キットが市場に流通せず、保険適用も一般のクリニックではまだ困難であるとのことですが、オーストラリアでは一つの検体で同時に8種類の感染症のPCR検査を行える機器があるとのことであり、日本でもそのようなことが行えるようになれば良いと考えます。
インフルエンザに関しては今までは高熱の人には抗原検査、あまり高い熱ではなかったり、発熱してから間もない人にはドライケム抗原検査を用いて検査を行ってきました。発熱した当日は両方の検査を行っても陰性になることがあり、翌日の検査でやっと陽性を確認できたということも経験しました。PCR検査を用いて発熱して間もないウイルス量の少ないインフルエンザを、早期に診断できるようになることには意味があります。
そして新型コロナウイルス感染症の診断をクリニックでPCR検査で行う場合、さらにインフルエンザの検査を行う場合には、抗原検査用に再度検体を採取せねばならず、あのイヤな鼻グリグリ検査はできれば一回で済ませたいですよね。

その他、スマートジーンによる新しいPCR検査として、胃の洗浄液を用いたヘリコバクターピロリの診断に対しても 新規にテストカートリッジ が開発されているとのことで、将来保険適用になるそうです。
内視鏡検査時にヘリコバクターピロリの迅速核酸検出が行えるだけではなく、クラリスロマイシンに耐性をもっているかどうかについても判断できるとのことで、除菌をする際にとても有用な情報が得られるようになると思います。

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