ウイルスの検出感度 抗原検査<ドライケム抗原検査<PCR検査
先日、軽い感冒症状が見られる方に新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの検査を行いました。
ドライケムIMMUNO AGという抗原検査の機器を使用し検査しました。
コロナについては15分後に陽性なら(+)という結果が出ます。
COVID19:(+)という結果でしたので新型コロナウイルス感染症に罹っているという結果でした。
インフルエンザについては、
A:(-)
B:(+)
という結果でした。
ウイルス量の多い検体では、1段階目で陽性になりカッコは付かない+という表示になります。
カッコ付きの (+) という意味は、イムノクロマト法の検出感度を高めた2段階目でやっと陽性になったということを表わしますので、ウイルス量の少ないB型インフルエンザを診断することができたということになります。
つまり新型コロナウイルス感染症とインフルエンザB型の同時感染という結果になりました。
別のイムノクロマト法の検査キットを用いて検査したところ、コロナはやはり陽性で、B型インフルエンザは陰性という結果になりました。
(下段の検査キット C:コントロールライン S:コロナ陽性を示すライン BA:インフルエンザB型・A型は陰性)
ドライケムの方が感度が良いので、このキットではラインが見えなかったものの、ドライケムでは陽性に検出できたということは考えられます。
このケースを含めてインフルエンザ陽性例は今季当院で5例しかありませんので、本例はコロナのみ罹患しており、インフルエンザについてはドライケム抗原検査の結果が偽陽性であった可能性もあると考えられました。
インフルエンザは発熱などの症状が見られて間もない時期は、ウイルス量が少なく通常のイムノクロマト法による検査では陰性になってしまい、翌日の再検査でやっと陽性になるケースをよく経験しました。
発熱後数時間の症例でも、ドライケム抗原検査を用いることで診断できた経験も何回もあります。
ドライケム検査では標識に用いる金コロイド粒子を、写真現象の銀増幅原理を応用する事により約100倍に増幅し、検出感度をが向上しています。
発熱外来ブログに、2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査について①~⑤として、
・新型コロナウイルスの抗原検査キット(QuickNavi ™-COVID19 Ag)
・ ドライケムIMMUNO AG を用いた抗原検査
・PCR検査
について感度・特異度などを詳細に書いてきました。
新型コロナウイルスの検出感度については、抗原検査<ドライケム抗原検査<PCR検査 ということになります。
本日経験したケースでは、微熱症状のみ見られた方でしたが、通常のイムノクロマト法の抗原検査では陰性になりました。
しかし、ドライケム抗原検査では陽性、PCR検査でも陽性になりました。
抗原検査キット(QuickNavi ™-COVID19 Ag) では陰性:左側
ドライケムIMMUNO AG では陽性:右側
PCR検査 でも陽性。
スマートジーンという当院のPCR検査では、コロナウイルスだけがもつ遺伝子を45サイクルかけて増幅し、検出します。
ウイルス量の多い検体では25サイクルくらいで陽性になることがあります。
発症後10日以上経過しているケースでは感染性ウイルスは排出されず、ウイルスRNA量も少なくなり、40サイクル以上でやっと陽性になりました。この場合はRNAウイルスの残骸や死菌を検出している可能性も考えられます。
このケースでは33サイクル目で陽性になっており、発症早期でウイルス量が少なく、通常の抗原検査キットでは陰性になったものと思われます。
国立感染症研究所と国立国際医療研究センターは、国内の積極的疫学調査により、オミクロン株症例の呼吸器検体中のウイルスRNA量の推移と感染性ウイルスの検出期間を検討しています。オミクロン株症例において、ウイルスRNA量は診断日および発症日から3~6日で最も高くなり、その後日数が経過するにつれて、低下傾向であったとのことです。診断または発症10日以降でもRNAが検出される検体は認められましたが、ウイルス分離可能な検体は認められませんでした。これらの知見から、発症または診断10日以降に感染性ウイルスを排出している可能性は低いことが示唆されました(国立感染症研究所. SARS-CoV-2 B.1.1.529系統(オミクロン株)感染による新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査:新型コロナワクチン未接種者におけるウイルス排出期間(第2報))。
また沖縄県の専門家会議の座長を務める琉球大学病院の藤田次郎教授は以下のような提言をされています。
まずウイルスの排出のピークがデルタ株では発症日でありましたが、オミクロン株では発症から3~6日目にピークを迎えるとのことです。(インフルエンザでは発症後2~3日目にピーク)
⇒このため濃厚接触者の追跡は発症2日前からではなく発症当日からで良いのではないか。
オミクロン株の潜伏期間は、平均2.8日、最大で5日である。
⇒濃厚接触者の待機期間を5日までに短縮可能である。
オミクロン株の致死率は約0.02%、デルタ株は約0.8%、インフルエンザでは0.1%以下であるとのことです。
オミクロン株は今までのデルタ株とはまったく異なった疾患であり、どんどん経済を回していくべきであるとの意見を話されております。
一足先に流行の波が来た沖縄での感染状況を、しっかりと見極めていくことは大切であると思います。
藤田教授が作成された上記の図を見ますと、従来株ではウイルス排出量のピークが発症日になり、このタイミングで抗原検査を行ってもコロナ陽性と診断し得ると思います。
ウイルス量排出のピークが3~6日目であるオミクロン株は、ピークが2~3日目のインフルエンザよりさらに遅れてピークを迎えることになります。
インフルエンザでも発症早期はウイルス量が少ないため、抗原検査では陰性になり、やっとドライケム抗原検査で陽性と診断できる症例がありました。
本日菊地医院で経験した症状が軽く、発症早期と思われるケースは、ウイルス量が少なく抗原検査では陰性になってしまいました。
インフルエンザと同じように発症間もないと思われるケースは、新型コロナウイルス感染症でも積極的にドライケム抗原検査やPCR検査を用いて検査をするべきであると思います。
しかし、現状ではPCR検査が不足しており、小学校や公立保育園などには抗原検査が配布されています。
2021-22冬期の発熱時のコロナ・インフルエンザの検査について①で記載したように、抗原検査の鼻ぬぐい液検体での感度は72.8%、鼻咽頭ぬぐい液検体の感度は91.7%であり、鼻ぬぐい液は鼻咽頭ぬぐい液に比べて低くなっています。自宅などで採取する場合はだ液か鼻ぬぐい液になってしまうのではないかと思います。
発症からの時期を考慮して検査を行い、十分な量の検体を採取し抗原検査を行っていくことが大切であると思います。