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発熱外来ブログ

インフルエンザ・コロナ 同時流行 ★インフルエンザ・コロナ 同時PCR検査

2023.01.08

インフルエンザは1医療機関当たりの1週間の患者数が、全国で1人を超えると「全国的な流行期」入りとされています。
2022年第51週(2022年12月19日~12月25日)1医療機関当たりの1週間の患者数:1.24全国的な流行期」 に入る。
2022年第52週(2022年12月26日~2023年1月1日) 1医療機関当たりの1週間の患者数:2.05 前週から増加。

菊地医院では新型コロナウイルス感染症第8波の拡大・新規感染者数の急増に対して、年明けから発熱外来での検査枠を拡充して対応しています。
1月5日木曜日 陽性者数 コロナ:10名 インフル:2名
1月6日金曜日 陽性者数 コロナ:15名 インフル:4名
1月7日土曜日 陽性者数 コロナ:6名 インフル:2名
と徐々に発熱者の中にコロナだけではなくインフルエンザの方が増えてきました。
インフルエンザは現時点では本格的な流行とは言えないにしても、まさに恐れていたインフル・コロナの同時流行ツィンデミックを迎えようとしています。

インフルなのかコロナなのか、初期症状では判明できません。
インフルとコロナの同時流行(ツィンデミック)の状況になった現在、発熱者に対して一回の検体採取で同時に両方の検査を行えることが望ましいと考えます。
当院で行えるインフルエンザとコロナの検査は以下の表の様になります。

コロナウイルスに対するスマートジーンによるPCR検査以外は、抗原検査になります。

また当院に3台あるPCR検査機器:スマートジーンに使用できるテストカートリッジとして、A型およびB型のインフルエンザウイルスRNAを検出できる新しいキット:スマートジーン Flu A、Bが開発されています。
このカートリッジを使用すれば一回の 鼻グリグリ検査 で得られた検体を用いて、インフルエンザとコロナの両方をPCR検査で同時に診断することができます

しかし、現在このスマートジーンによるインフルエンザのPCR検査は保険適用はあるのですが、病院で重症の入院患者に対してのみ使用でき、クリニックでは保険が適用されにくい状況なのであります。

発熱咽頭痛を呈する小学生の娘さんと母親の方が来院されました。
この症状では新型コロナウイルス感染症かインフルエンザ、あるいはそれ以外のウイルス・細菌によるかぜ症候群か、すべての可能性があります。
まず二人ともコロナのPCR検査、インフルのドライケム抗原検査を行いました。
ドライケム抗原検査は新開発の増幅技術により、イムノクロマト法(抗原検査)の検出感度を高め、発症初期のウィルス量が少ない検体に対して検出能が向上しています。

コロナのPCR検査は二人とも陰性でした(写真:上段)
インフルのドライケム抗原検査では、母親は陰性(写真:下段右側)でしたが、娘さんはA型が陽性、B型もカッコ付きで陽性という結果でした(写真・下段左側)。
カッコ付きでB:(+)という意味は、一段階目の通常の抗原検査の工程では陰性であったものの、増幅し検出感度を高めた2段階目で陽性の結果を得たという意味になります。

同じ検体を用いて通常のイムノクロマト法による抗原検査キットで再検してみました。

娘さんの結果(写真:左側)はコロナ陰性、インフルはA型陽性、B型は陰性という結果でした。
母親の結果は二つの検査キットでコロナ・インフルともに陰性でしたが、娘さんの結果が、ドライケム抗原検査ではA・Bともに陽性、通常の抗原キットではAのみ陽性と異なる結果になったので、最終的にインフルエンザのPCR検査を行い確認しました。

最終的にPCR検査で得られた結果は、娘さんも母親もインフルエンザA型陽性という結果でした。
娘さんはPCR検査ではB型は陰性という結果になりました。
ドライケム抗原検査での カッコ付きでB:(+)という 結果は、偽陽性であったと思われます。
娘さんは抗原検査でもインフルA型陽性の結果が得られましたが、母親は発症早期でウイルス量が少なく、インフルエンザA型に罹患しているものの、抗原検査・ドライケム抗原検査では陰性の結果であり、より検出感度が高いPCR検査によりやっと陽性の結果が得られたということになります。
前置きが長くなり申し訳ないですが、お伝えしたいことはインフルエンザ発症早期でウイルス量がまだ少ない状況では、母親については抗原検査では偽陰性になってしまったり、娘さんについてもドライケム抗原検査でB型の偽陽性がみられたり、確定診断が難しいということです。

発症からの日数と患者のウイルス排出量を、季節性インフルエンザと新型コロナウイルス感染症で比較したグラフを示します。(出典:インフルエンザと新型コロナの発症前後の感染性の違い:大阪大学 忽那賢志先生)

潜伏期を経て発症し、症状のみられる有症状期に移行しますが、季節性インフルエンザでは発症後にウイルス排出量がピークに達します(感染性ピーク)。
インフルエンザの場合、熱などの症状がみられてから数時間しか経過していない発症早期に、通常の抗原検査を行っても結果が陰性になってしまい、感度に優れるドライケム抗原検査で再検してやっと陽性と診断できたり、ウイルス量の増えた翌日に検査して陽性と診断し得たケースを多く経験します。
有症状期の感性姓ピークになり、十分なウイルス量があってやっと抗原検査で陽性になる場合がありますので、潜伏期や発症早期のウイルス量が少ない時期であっても検出感度が優れ、陽性の診断が得られる可能性の高いPCR検査はとても頼もしいです。

右側のグラフのように、デルタ株などの新型コロナの従来株では、発症前後に感染性ピークがあることが特徴であり、症状の見られた当日から9日目までに抗原検査で陰性となった場合には、新型コロナではないと言い切ることが可能でした。

オミクロン株のウイルス表面のスパイク蛋白質は、細胞表面のACE2への親和性が高く、デルタ株に比べて細胞に侵入しやすくなっています。
またデルタ株に比べて伝播性が高いことも示唆されています。
移りやすいし拡がりやすいということになります。

インフルエンザとコロナの同時流行ツインデミックの大変な脅威が日本に襲来します。
一回の鼻ツッコミ検査でコロナとインフルエンザの両方のPCR検査が行えることは素晴らしいと思います。
検査キットが市場に流通せず、保険適用も一般のクリニックではまだ困難であるとのことですが、第8波のまっただ中、この頼もしい検査が日常的に行えるようになると良いのですが・・・・

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