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発熱外来ブログ

インフルエンザに何回もかかる? 2023年9月・10月・11月の菊地医院での インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の 検査数・感染者数・陽性率

2023.12.05

9月10月11月の菊地医院でのインフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の検査数抗原検査PCR検査)、感染者数陽性率を表とグラフにして示します。

PCR・抗原検査での新型コロナウイルス感染症の合計陽性率は、8月63%9月43%10月7%11月5%、と10月以降顕著に減少しました。一方インフルエンザの陽性率は 8月2%9月26%10月47%11月32%、と10月に陽性率がピークになり11月に少し減少しましたが、依然として流行しております。

昨年10月7日に『コロナに何回もかかる?』という題名で発熱外来ブログを書きました。

9月以降、2~3週間の間に繰り返してA型インフルエンザにかかった方が何人かおられました。
同じシーズン中にインフルエンザに2回もかかることがあるのでしょうか?
高熱や全身の倦怠感、のどの痛み、せき、鼻水・・・
インフルエンザの症状はとてもつらいものですが、1回でもこりごりなのに2回もかかったらたまらないですよね。
インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することで発症しますが、ウイルスの種類が多く、同じシーズン中であっても数種類のウイルスが出現することもあります。
そのため、以前にかかったウイルスとは別のウイルスに感染すると、同じシーズンであっても再度インフルエンザを発症してしまう場合があるのです。
一般的には、冬にインフルエンザA型、春先にインフルエンザB型が流行する傾向があります。A型とB型とはウイルスの種類が異なるため、A型に感染して獲得した抗体はB型には有効ではありません。そのため、冬にA型に感染していたとしても春先に再度、B型に感染してしまうことがあるのです。
また、上述したようにインフルエンザA型に2回かかってしまうケースもみられます。
A型はウイルスの種類が多様で、同じシーズン中に違う種類のA型ウイルスが流行していることがあります。このとき、同じA型であってもウイルスの種類が異なるため先に感染したウイルスの抗体は有効ではありません。
そのためA型に2回かかってしまうのです。

国立感染症研究所の週別インフルエンザウイルス分離・検出報告数のデータを以下に示します。

秋口から11月16日まで(第36~45週)に検出されているインフルエンザウイルスは赤色A/H1pdm09型、と緑色A/H3型、そして青色ビクトリア系統のB型が少し認められています。
同時に3種類のインフルエンザウイルスが分離・検出されています。
理論上はシーズン中に3種類のウイルスに次々と感染する可能性も考えられる訳です。
今年の年頭から春先(第2~14週)まではA型は大半が 緑色A/H3型 が流行しておりましたが、現状は A/H1pdm09型A/H3型 が半々くらいの割合で認められています。
A/H1型 にかかったあとすぐに A/H3型 にうつる可能性がある訳です。(その逆もあり)

インフルエンザの流行は11月下旬から3月までの約5ヶ月間が例年の傾向です。この期間、タイプの違うA型ウイルスやB型ウイルスが流行を引き起こします。
そのため、場合によっては2回どころか、3回インフルエンザにかかってしまう可能性もあるのです。
長期にわたる流行シーズンをしっかり乗り切るためには、予防接種を受け、有効な抗体を獲得することが大切です。
予防接種のワクチンはシーズンごとに流行を予測して作られるため、1回の接種で複数のインフルエンザウイルスに有効な抗体を獲得できます。
その効果は接種後2週間から3~6ヶ月までと考えられているので、流行期をカバーするには、11月までに予防接種を済ませておくのが望ましいです。
医療機関によっては9月から接種できるところもありますが、あまり早くに済ませてしまうと、シーズン後半まで効果が続かない場合があります。
子供など2回接種する場合は、9~10月に1回目、10月~11月に2回目を受けると良いでしょう。
現時点ですでにインフルエンザに罹患している方も、おそらくA型インフルエンザにかかったのだと思いますが、この後別の型のA型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルスにうつる可能性がありますので、一度かかったから今シーズンはもうかからないだろうと安心するのではなく、まだワクチンを接種していないのであれば接種することをおすすめします。
子どもは生後6ヶ月からインフルエンザの予防接種が受けられます。
13歳未満の場合は2回、13歳以上は1回とされています。
大人の場合、1回接種が原則とされています。
ただし、基礎疾患があり、免疫が著しく抑制されている場合は2回接種した方がより高い予防効果が得られる場合があります。
高校受験、大学受験を控えた方には、2回接種をおすすめしています。

インフルエンザの陽性率は当院でも10月にピークを迎え、11月には少し減少しましたが、今後寒さが厳しくなる時期を迎えて感染者が増えていく可能性が考えられます。


日本における新型コロナウイルス感染症の年間を通しての過去の発生状況をみてみます。
2023年5月8日からは日本政府は新型コロナウイルスの感染法上の分類を、季節性インフルエンザと同じ「5類」に引き下げました。5月8日までの1日ごとの国内の感染者数のグラフを示します。

5月8日以降は全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナの患者数(黄色い棒グラフ)になりますが、
11月26日までの1医療機関あたりの平均患者数(全国)のグラフを以下に示します。

新型コロナウイルスの全国の感染状況は、11月26日までの1週間では1つの医療機関当たりの平均の患者数が2.33人で、前の週の1.19倍となり、3ヶ月ぶりに増加に転じました。
全国的に患者数が増えていて、12月以降も増加が続くか注視する必要があると発表されています。
上の二つのグラフから、この2~3年の年間を通しての日本での新型コロナウイルス感染症の発生状況をみてみますと、毎年1月に感染の大きな波があり、春以降徐々に収まっていき、夏場にまた大きな波が再来する、そして秋口に再び収まり、また1月に波が襲来するといった傾向を繰り返しています。
感染の波が襲来するシナリオは、
「これまでに流行していた新型コロナウイルスの残り火が、寒い季節に再燃する。」とか、
「ウイルスの株の新たな派生型が流行する。」
「新しい変異株の出現」
といった要素も影響してくると考えられますが、
・日本の独特な生活様式・習慣
・日本の地域的、環境的な特性
といった要因にも大きく影響を受けるのではないかと考えます。
2021年1月、2022年1月と真冬の時期に大きな感染の波がありました。
毎年の傾向から2023年1月にまたコロナの波が襲来する可能性は考えられると思います。
そしてこの時期にインフルエンザも流行っていたら、またツインデミックになってしまうリスクがあります。

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症の ツインデミック に備えるため、インフルエンザ感染とその後のコロナ感染の重症化との関連性を検討した韓国の論文を見つけました。

『インフルエンザウイルス感染症はCOVID-19患者の重症化の危険因子:全国規模の人口ベースコホート研究』
Influenza viral infection is a risk factor for severe illness in COVID-19 patients; a nationwide population-based cohort study.

Hwang JH et al. Emerg Microbes infect. 2023 Dec;12(1):2164215.

この論文の結論として、COVID-19感染前1年以内にインフルエンザに感染した人は、SARS-Cov-2感染による重症化のリスクが高いということが分かりました。
コロナにかかる前に、先にインフルエンザに感染した人は、コロナが重症化するリスクが高くなってしまうということです。
そうなると、来年1月にコロナとインフルのツインデミックが襲来する可能性に備えて、コロナの重症化を防ぐためにその前にインフルエンザにもかからないように、インフルエンザワクチン接種の他、効果的な公衆衛生管理対策が必要になると思われます。
前述したように、シーズン中に繰り返しインフルエンザに罹患することもありますので、インフルエンザワクチン接種の重要性をあらためてお伝えしたいと思います。

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