『目に見えない感染』の拡大 12月および2022年の菊地医院での検査数・感染者数・陽性率
日本国内の新型コロナウイルス感染症の1日ごとの新規感染者数は、12月28日時点で216219人であり、
第7波のピーク(8月19日 261004人)を年明けには超えてしまいそうな勢いです。
一方で、28日に発表された新型コロナウイルスに感染して死亡した人の数は、415人で過去最多となりました。
これまで死者数が最も多かったのは今年9月2日の347人で、初めて400人を超えました。29日は420人になりました。
もしかしたら発表された新規感染者数以上に、発表されていない『目に見えない感染』が拡がっていて、それをベースにして重傷者数・死者数が増えているのではないかという指摘があります。
第7波の感染者数の倍以上いるのではないかと話す医療関係者もいます。
9月26日より、全国一律で、新型コロナウイルス感染症の療養の考え方を転換し、全数届出の見直しを行うこととされました。
これにより9月26日以降にコロナ陽性となった方は、65歳以上の方・重症化リスクのある方・症状の強い方以外の人は自身で陽性者登録をしなければならず、従来のように医療機関が保健所に発生届を提出し、その後の保健所からの連絡を待つという流れはなくなりました。
この流れになってからは、積極的に自分で陽性者登録をしない人がかなり出てくるようになったのではないかと思います。
陽性者の同居家族で症状があるのに検査をしない人、持っていた抗原検査キットで陽性であるにもかかわらず陽性者登録をしない人などが、かなりいるのではないかと思います。
新型コロナウイルス感染症に罹ることへの恐怖心、他人にうつすことに対する警戒が薄れてきていて、そもそも症状があっても検査をしない人が相当数いるのではないかと思います。
また、政府は9月7日、新型コロナウイルスに感染し症状がみられた患者の療養期間を 10日間から7日間 に短縮しました。
症状が出ても7日たてば大丈夫なのか?
他人にうつすことはないのか?
これまでは10日だったのに、短縮する科学的な根拠はあるのか?
専門家からは、7日たっても周りの人に感染させるリスクはあるとして、慎重な行動を求める意見も出ていました。
9月7日に開かれた厚生労働省の専門家会合で示されたデータでは、感染して症状が出た59人のウイルス量を調べたところ、発症した日を「0日」とした場合、発症から7日から13日目までのウイルス量は、3日目までの量に比べて「およそ6分の1」に減少したとしています。(オミクロン株の「BA.1」が広がり始めていた2021年11月から22年1月にかけて、国立感染症研究所が行った調査)
調査では「感染から7日後以降でもウイルスは排出しているものの、感染を広げるリスクは低下していると考えられる」としています。
また発症した日から何日目までウイルスが検出されるかも調べられています。
療養期間が見直される前の、療養期間明け11日目は、
▽11日目・・3.6%の人からウイルスが検出され、療養期間が見直された後の、療養期間明け8日目は、
▽8日目・・16.0%の人にウイルスが検出されたとのことです。
ウイルスがこれだけ残存していれば、発症から一定期間経過した後も感染が拡がる可能性が考えられます。
当院でのケースでは、12月20日に咳・頭痛・嘔吐などの症状がみられ、翌日持っていた抗原検自身自身で検査して陽性、当院を受診され確定診断をしました。症状がみられてから7日間経過した12月28日に咳などの症状が持続するため、さらに内服薬を処方して欲しいとのことで来院されました。その日にも自身で抗原検査を行っておりましたが、発症1日目に比べると陽性ライン(T)は少し薄くなったとのことですが、はっきりとラインが検出されておりました。
また別のケースでは、務めている会社の方針でPCRの検査の結果が陰性になったことを確認してから出社してほしいとのことであり、療養が明けてからも自費診療(会社負担)で7日おきにPCR検査を行った方がいます。
当院のPCR検査器(スマートジーン)では、ウイルスの遺伝子を45サイクルかけて増幅し検出します。
ウイルス量が多く、人に移しやすい時期には20サイクル台(およそ40分)くらいで陽性の結果が出ます。
このケースでは、
8日目 :9/45 39サイクル目で陽性
15日目 :43/45 43サイクル目で陽性
22日目 :陰性
となり、発症から3週間以上経過しやっとPCR検査での陰性が確認されました。
新型コロナウイルス感染症は免疫反応がゆっくりとしか起こらないため、ウイルスはダラダラ、ダラダラと体の中で増え続けていて、感染してから2週間、3週間経過してもまだウイルスを出している人がいます。
40サイクル台での陽性はほぼ他人に感染させるリスクはなく、社会復帰は問題がないと思われますが、ウイルス残存量には個人差もあり、この方は8日目に30サイクル台後半で陽性になっています。
9月26日 以前は発生届が出た人に保健所が連絡を取り、症状がみられた日を聞いて厳格に療養期間を設定していたものと思われますが、自身で陽性者登録をするようになってからは、できるだけ速く復帰したくて発症日を早めに設定し、療養期間を短くしてしまう人もいるのではないでしょうか?
はっきりと症状が現れた日ではなく、その2日前くらいに軽く咳をしていたからその日を「0日」として設定するといったような対応をする人もいるかもしれません。
8日目にはウイルスが25%の人で検出されたという報告(ハーバード大学などのグループによる研究)があり、他人に感染させる可能性があるのに、さらに発症日を前倒しし療養期間を短く設定されたら、療養明けの人からの感染のリスクが高くなってしまいます。
前述のようにPCR検査で陰性を確認してから出社する、までは必要ないですが、7日たっても周りの人に感染させるリスクはあるとして、慎重に行動することも必要です。
療養期間を短縮することを容認する考えは、
「発症から7日間が最も感染性が高いことが分かっている」
「医療や社会機能を維持することも必要」
といった意見によるものです。
日本政府は来年の4月を目処に、感染法上の類型変更をめぐり、新型コロナウイルス感染症を現在に2類相当からインフルエンザなみの5類に緩和する方向で検討しているとのことです。
新型コロナウイルス感染症の検査・治療、予防のためのワクチン接種にかかる医療費は莫大なものであると思います。
ただ、死者数の過去最多が2日間更新された現在、陽性者の届け出を見直す、2類から5類への感染症の類型を見直す、さまざまな規制の緩和を行ったりする国のトップの方々や政治家には、変異を繰り返していくウイルスの前では、慎重であり、その自然科学の現象の前では謙虚であってほしいと思います。
新型コロナの社会的な終息は、そうした人たちの社会政治的な決定によって促されるものではないと思います。
多くの国民が コロナに対する恐怖心が薄れてきて終わる ものであり、私はまだまだコロナが怖いし、罹りたくないと思っています。
さて12月の菊地医院での検査数(抗原検査・PCR検査)、感染者数、陽性率を表とグラフにして示します。
1ヶ月間の検査数は243例(抗原検査:183例、PCR検査:60例)、
陽性者数は144例( 抗原検査:120例、PCR検査:22例 )、
陽性率は58%でした。
インフルエンザは6例ありました。
こちらは2022年のグラフになります。
こちらは菊地医院のホームページへのアクセス数を示した表になります。
日 | 訪問数 | ページ | 件数 | バイト |
2022年 12月 01 | 8,218 | 10,935 | 284,696 | 8.00 Gb |
2022年 12月 02 | 7,202 | 8,199 | 242,391 | 6.81 Gb |
2022年 12月 03 | 7,303 | 8,083 | 245,070 | 6.83 Gb |
2022年 12月 04 | 7,009 | 7,666 | 233,230 | 6.32 Gb |
2022年 12月 05 | 9,389 | 10,397 | 317,635 | 8.85 Gb |
2022年 12月 06 | 9,105 | 10,052 | 306,020 | 8.56 Gb |
2022年 12月 07 | 9,338 | 10,411 | 318,572 | 9.28 Gb |
2022年 12月 08 | 9,527 | 10,592 | 321,884 | 9.22 Gb |
2022年 12月 09 | 9,618 | 10,663 | 322,531 | 8.84 Gb |
2022年 12月 10 | 8,947 | 9,809 | 297,498 | 8.11 Gb |
2022年 12月 11 | 8,747 | 9,577 | 290,490 | 7.91 Gb |
2022年 12月 12 | 11,892 | 13,239 | 402,108 | 11.16 Gb |
2022年 12月 13 | 11,737 | 13,038 | 395,673 | 10.95 Gb |
2022年 12月 14 | 11,384 | 12,622 | 383,210 | 10.69 Gb |
2022年 12月 15 | 11,058 | 12,229 | 372,821 | 10.35 Gb |
2022年 12月 16 | 11,038 | 12,186 | 366,611 | 9.92 Gb |
2022年 12月 17 | 9,903 | 11,080 | 331,181 | 9.09 Gb |
2022年 12月 18 | 9,589 | 10,523 | 317,164 | 8.43 Gb |
2022年 12月 19 | 12,741 | 14,044 | 427,017 | 11.73 Gb |
2022年 12月 20 | 12,900 | 14,276 | 434,621 | 11.89 Gb |
2022年 12月 21 | 12,999 | 14,408 | 434,002 | 11.86 Gb |
2022年 12月 22 | 12,672 | 14,042 | 426,456 | 11.64 Gb |
2022年 12月 23 | 11,514 | 12,763 | 383,372 | 10.47 Gb |
2022年 12月 24 | 10,333 | 11,378 | 339,005 | 9.22 Gb |
2022年 12月 25 | 10,422 | 11,419 | 344,558 | 9.09 Gb |
2022年 12月 26 | 14,446 | 15,964 | 484,408 | 13.00 Gb |
2022年 12月 27 | 14,092 | 15,621 | 473,324 | 12.83 Gb |
2022年 12月 28 | 13,654 | 15,055 | 460,331 | 12.45 Gb |
2022年 12月 29 | 12,398 | 14,621 | 414,093 | 11.04 Gb |
2022年 12月 30 | 11,132 | 12,215 | 369,265 | 9.63 Gb |
2022年 12月 31 | 10,207 | 11,223 | 337,639 | 8.90 Gb |
平均 | 10,661 | 11,881 | 357,318 | 9.78 Gb |
合計 | 330,514 | 368,330 | 11,076,876 | 303,08 Gb |
12月は1日の訪問数がはじめて1万人を超えて、12月26日は14446人、1万人を超える日が18日間もありました。
2021年1月(第3波)、2022年1月(第6波)と真冬の時期に大きな感染の波がありました。
もうすでに第8波は拡大していますが、来年1月には新規感染者数のグラフがパリのエッフェル塔のように、先端に向かうに従いさらに急峻な傾きをみせるのではないかと思っています。
その波に、過去2シーズン影を潜めていたインフルエンザの波が重なれば、とても過酷な状況になってしまうと思われます。
3年ぶりに行動制限のない年末年始を迎えます。
中国では「感染爆発」が起こっていますが、海外渡航規制を大幅に緩和しており、その影響が日本に飛び火する恐れがあります。
本格的な第8波はオミクロン株の新たな亜型 『BQ.1.1』(ケルベロス)が拡大したときに起こるという懸念もあります。
日本の第8波はケルベロスが主流になって置き換わっていくのではないかとも言われており、国内では12月1週目にはケルベロスを含む『BQ.1系統』が79%を占めるという推定値が発表されていました。
これらの変異ウイルスは「BA.5」と比べて、感染した場合の重症度が大きく変わるとは考えにくいものの、免疫を逃避する能力が高くなっており感染力が強まることは予想できるようです。
そしてこれから日本は真冬を迎えます。
寒くなると、屋内で過ごす機会が多くなり、人と人との距離が接近します。
寒いので換気が頻繁に行われなくなり、空気が乾燥しエアロゾルとして空中に漂う新型コロナウイルスに、飛沫感染してしまう環境が整いやすくなってしまいます。
寒さにより人間の免疫力・抵抗力も衰えます。
新しい年を迎えるにあたり、何一つ明るい要素はありません。
唯一明るい話題は、緊急承認された新型コロナウイルス感染症の治療薬『ゾコーバ』が、来年クリニックでも処方できるようになるということでしょうか。
ゾコーバは3つ目のコロナの飲み薬になりますが、飲み始めて4日目にはコロナウイルスの量が30分の1になり、咳・咽頭痛・鼻水・鼻づまり・発熱・倦怠感などの症状が消えるまでの時間を24時間短縮できたという結果が出ています。
ラゲブリオ、パキロビッドは重症化リスクのある患者さまにしか使えないのに対し、ゾコーバは基礎疾患のない方でも症状の強い人に対して使うことができます。
当院でも使用できるように申請しており、当初は供給が不安定かもしれませんが、発症後かなりキツい症状がみられる方も多く、症状が緩和できるように処方していきたいと考えます。